残業代請求の手続きのフローをまとめましたので参考にしてください。
労災認定された時の平均賃金の計算は残業代込みの計算方法になりますので、忘れずに残業代請求もしておきましょう。
残業代請求の期間は和解成立がスムーズに行って5ヶ月弱です。
生活資金の確保等も考慮の上、残業代請求を行いましょう。
目次
残業代は労働者が会社に対して法的に主張できる権利です。
しかし、実際には残業代をもらえていない人やもらえている人でも正しく計算されていない人が多くいます。
残業代をもらうことは、自分自身だけでなく会社や社会にもメリットがあります。
- 自分自身: 生活費や貯金に充てることができる。ストレスや疲労が軽減される。自己肯定感やモチベーションが高まる。
- 会社: 労働者への信頼感や忠誠心が高まる。生産性や品質が向上する。労災や離職率が減少する。
- 社会: 過重労働やブラック企業への抑止力になる。所得税や消費税等へ還元される。
一方で、残業代請求に関しては以下のような誤解や注意点もあります。
真実: 残業代請求は労働者の権利であり、会社に不利益を与えるものではありません。むしろ、残業代を支払うことで会社の経営や労働環境が改善される可能性があります。
真実: 残業代請求は比較的簡単な手続きで行うことができます。残業時間がわかる資料を用意し、労働基準監督署や弁護士などの専門家に相談することで請求が始まります。最初のバードルは高く感じますが、数百万円単位の請求になることもめずらしくないので、まずは相談から始めてみましょう。
真実: 残業代請求は法的に保護されており、会社から不当な扱いを受けた場合には救済措置を受けることができます。例えば、解雇・降格・減給・ハラスメントなどの不利益処分や嫌がらせを受けた場合には、労働基準監督署への申告や労働審判申立などの方法で対抗することができます。もっとも、多くの場合は在職中よりも転職などで退職後に行うことが多いとは思います。
以上のように、残業代請求にはメリットも多く、誤解も多いものです。
まずは情報を万が一に備えて情報を集めておく習慣を身につけておかなければなりません。
これは学校でも会社でも教えてくれませんので、自分自身で意識をして習慣化しておく必要があります。
残業代請求では情報がないばかりに「泣き寝入り」することも珍しくありません。
さまざまな事態を想定し、動くときにはすぐに動けるように「準備」をしておきましょう。
なお残業代請求には「時効」がありますので注意してください。
年俸制|年収の12分の1に分割し、毎月支払う制度。
みなし(固定)残業制|毎月の給料に一定の残業時間をしたとみなして支給する制度。残業をしていなくても、設定した残業時間をしたとみなす賃金制度のため、残業時間が少なければ少ないほど得する制度。
年俸制だから残業代が出ない。みなし(固定)残業制だから働かせ放題。というケースがよくありますが、これらは違法です。
会社の制度がどうであれ、週40時間以上の労働には割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。
いずれの制度も「雇用契約書」には「残業代〇〇時間分含む」と書かれている場合が多いと思いますが、契約以上の残業をした場合は、その時間分の残業代を支払う義務があります。決して働かせ放題の契約ではありません。
会社が「〇〇時間以上の残業代は出せない」と言っても、信じてはいけません。速やかに「労働基準監督署」または「弁護士」に相談しましょう。
契約内容|固定残業制(月40時間分の残業代を含む)
①|4月の残業時間は20時間だった場合。
②|5月の残業時間は50時間だった場合。
①|実際に残業した時間は20時間ですが、契約では「毎月40時間分の残業代を支払う」という内容のため、契約より実際に働いた時間が少なくても、40時間分の残業代を受け取ることができます。
②|実際の残業時間は50時間なので、50時間(実際の残業時間) − 40時間(みなし残業時間) = 10時間となるので、5月の残業代は通常月より10時間多い50時間分の残業代を受け取れます。
もし、40時間分の残業代しかもらっていない場合は10時間分の残業代が「未払い残業代」となります。
多くの方は「管理職=残業代が出ない」と思っているのではないでしょうか。実はこの「管理職」、法的にはなんの根拠もなく、会社がただ単に読んでいる「肩書き」にすぎません。
たとえば「部長」「課長」「マネージャー」「主査」などなど…。
会社によって自由に呼び方を変えることができます。
「管理職」になることによって、残業代が出なくなる方も多いのではないでしょうか。
しかし、これは誤りです。
残業代の支給が必要がないポジションは、法的には「管理監督者」と呼ばれるもので「管理職」とは異なります。
目安としては「経営会議に出席するメンバーであること」と考えればいいと思います。
部長や課長が経営会議で経営方針について発言する機会はあるでしょうか?
もしそうでなければ「名ばかり管理職」の可能性が高く、残業代の支給対象となります。
また、管理職の場合「管理職手当」を残業代の代わりとして支給している企業もあると思いますが、これは残業代の代わりにはなりません。
それだけでなく、基本給や管理職手当を含めた金額が残業代計算の基礎額となるため、残業代請求の金額はかなり高額になります。
労働基準法では下記の図2以外の項目は残業代計算から除外することができません。
そのため「管理職手当」も残業代計算の基礎額に含まれるのです。
参考|弁護士西川暢春の咲くや企業法務TV
参考|知って得する労務のお話
参考|社労士ゆーちゅーば/YOU
タイムライン上に残業代請求の流れと、時系列に関連した記事をまとめましたので、詳細内容を知りたい方は関連記事をご覧ください。
証拠集めは「訴えようと思ったとき」ではなく「普段から万が一に備えて準備しておく」ことが重要です。
①|勤怠記録(メモでも可)②|給与明細 ③|雇用契約書 ④|就業規則 ⑤|賃金規定 ⑥|組織図| ⑦|上司からの指示記録(メールでもメモでも可)
上司からの指示や発言に関しては(5W1H)の形で残しましょう。
- いつ(〜年〜月〜日〜時ごろ)
- どこで(職場のデスク、会議室などで)
- だれが(上司の〇〇から)
- なにを(〜するように指示された)
- どのように(断れない雰囲気だった、断る権限がなかったなど)
なお、自分で残業代を自分でやってみたいという方は下記の記事を参考にしてください。
事前連絡は不要です。当日労働基準監督署へ証拠資料を持っていきます。
利用可能時間は8:30〜17:15で平日なので注意してください。
在職中の方は休みをとっていくしかないので、事前準備はしっかりしておきましょう。
受付で「未払い残業代請求について相談しにきました」と言えば、担当者に代わってくれます。
相談する際に「証拠資料」を提出し、担当者がコピーします。その間アンケートに記入を依頼されるので残業代請求についての内容を記載します。
アンケートは「匿名」か「実名」かを選ぶことができますが、「実名」の方が集中して調査ができるので回収できる確率は上がります。ただし、在職中の方にとってはハードルが高いと思いますのでその場合は「匿名」でもいいでしょう。
ただ、「匿名」の場合は、調査時間が分散されることと、実際に動いてもらえる可能性が下がります。
ちなみに複数名から訴えがあった場合は匿名であっても労基署から調査が入ります。ただし、対応は企業の任意なので、あまり期待しない方がいいと思います。
訴えた内容の確認のために会社に労働基準監督署の監督官が調査しにいきます。
労働基準監督署の調査は会社に行き、会社の担当者に「勤務表」や「雇用契約書」などの資料を要求します。
この際、匿名の場合は複数名の調査を同時にしなければならないので、調査時間が分散されます。調査時間には限りがある上、会社側は時間稼ぎ等の対策をとるため、資料を精査する時間が取れなくなります。
実名であれば、対象を絞って調査できるため、提出資料との照合や経営者へのヒアリングの時間が取れます。
労働基準監督署へ訴えてから1ヶ月ほどで調査結果の報告があります。
一つ注意が必要なことは、労働基準監督署の指導には「強制力がない」という点です。
罰則規定はあるものの強制力がないため、会社側はのらりくらりと交わし続ければ「時間切れ」を狙うことができてしまいます。
つまり、残業代を支払うかどうかは会社側の「任意」なのです。
この点があまり労働基準監督署への訴えがあまりオススメできない理由です。
払ってくれたらラッキーくらいの感覚がいいでしょう。なにより無料で利用できる点は大きなメリットです。
労働基準監督署の指導で会社側が支払いの意思がある場合は会社から残業代が振り込まれそこで完了です。
残念ながら回収できなかった場合はその旨の連絡がありますので、次のステップへ進みましょう。
弁護士への連絡は「日本労働弁護団」をオススメします。
全国に支部があるので、近くの支部に連絡をしましょう。
連絡する支部によって、曜日と時間が異なりますので注意しましょう。
なお、電話には直接弁護士の方が担当しますので、相談内容を伝えましょう。事前に情報をよく確認しておくことが大事です。
また、弁護士費用などの情報についてもこの時点で確認しておくことをオススメします。
弁護士と面談日程を調整し、面談を行います。その際相談状況に応じて複数会い担当弁護士を選んでもいいですし、その弁護士で問題ないと判断したら依頼をしましょう。
相談料は弁護士事務所によりますが、大体1時間5,000円くらいです。
また、弁護士費用についてもこの時点で確認しておきましょう。弁護士費用は弁護士事務所で自由に決まっていますので、金額は様々です。一つの目安はありますが、予想外に高額になる場合がありますので契約時には契約書をよく読み、疑問点については質問をしましょう。
全ての疑問が解消されたら契約です。
弁護士を決めたら、証拠書類を提出します。といっても、原本を渡すのではなくコピーを取ります。この時に渡す情報量が弁護士の武器となりますので、できるだけ多くの情報を渡すようにしましょう。
不明点や不足した情報がないかよく確認しておき、不足している情報がある場合はできるだけ取りに行きましょう。退職後は回収が難しくなりますので、冒頭の「7つの鉄則」を習慣にしておけば、もし退職した場合であっても弁護士に渡す情報には困らないはずです。
証拠書類を提出したら、弁護士事務所で請求額の計算をしてくれます。計算が終わったら計算シートを送ってくれるので、計算内容をよく確認しておきましょう。念の為間違いがないか自分で計算してみることをオススメします。また、ここでも疑問があった場合は確認しましょう。
請求金額が決まったら、弁護士が「内容証明」を会社に送ってくれます。これで正式に残業代の請求が行われたという証明になります。この時点で「時効の経過がストップ」します。
そのため、その日から3年前までの残業代の請求を会社に対して行うことになります。
また、残業代には利息がかかり、在職中の未払い残業代に関しては「年率6%」、退職後には「年率14.6%」の利息を元の残業代に上乗せして請求します。
ちなみにですが、この内容証明は自分で作成して送ることもできます。
弁護士が代理人となり、会社と交渉をします。連絡は会社と弁護士とのやり取りで完結するので、会社と依頼人が接触することはないので安心してください。
交渉内容や状況については、弁護士が報告をしてくれるので、交渉内容で進めていくか、それとも金額面で折り合わない場合は裁判まで進むのかを選択します。
この際、自分が譲れない最低ラインを設定しておきましょう。個人的には最低でも請求額の8割以上は確保したいところです。交渉の際の手応えや感想についても弁護士から報告があると思いますので、状況を考えてから判断しましょう。
和解交渉は複数回に渡ることがありますが、平行線になりそうなら裁判に進むのが良いでしょう。
こちら側から提示した和解額で会社側が了承した場合はそこで残業代請求手続きは完了です。「同意書」を確認して押印すると、正式に和解が成立します。
一方会社側が断固拒否の姿勢を見せた場合は、裁判に移ります。
裁判費用は別途かかるので、費用については最初に弁護士へ相談した段階で確認しておきましょう。
和解が成立した場合は速やかに会社から弁護士に残業代が支払われます。そこから弁護士費用が引かれた金額が自分の口座に振り込まれ、以上で残業代請求の手続きは完了です。
裁判の場合は次のステップに進みましょう。
事前交渉で和解が成立した場合は裁判になります。裁判の場合は事前に弁護士と裁判についての打ち合わせを行います。
改めて請求金額を決め裁判所に民事裁判手続きを行います。基本的な手続きは(通知書の送付など)弁護士が行ってくれますのが、事前打ち合わせの段階で疑問点は解消しておくようにしましょう。
訴状の内容チェックを行い、問題なければ裁判所に提出し、正式に裁判となります。
裁判が開始します。口頭弁論・弁論準備・証人尋問の順で行われます。証拠をもとに原告(訴えた人)、被告(会社)との間に裁判所が入り、お互いに主張の述べます。
また、この間も裁判とは並行して会社と和解交渉が行われます。ここでまとまった場合は、訴訟は取り下げられ、和解が成立します。
なお裁判所の場所については下記リンクをご覧ください。
判決前に和解が成立すれば、訴訟は取り下げられ裁判が終了します。その後の手続きは会社が弁護士に和解額を振り込み、弁護士から弁護士費用等が引かれた金額が自分の口座に振り込まれます。
判決の場合は、裁判所が支払い金額について決定を下します。この際は弁護士(代理人)に判決書が行き、弁護士経由で判決内容の詳細を確認することができます。
なお、悪質な場合は「付加金」が最大で請求額の2倍の金額が会社側に課されることがありますが、実際には控訴の手続き中に残業代を支払ってしまえば「未払い債務」がなくなるため、判決上は課されたとしても、実際に支払うケースはほとんどないそうです。
和解が成立した場合は、そこで残業代請求手続きは完了です。「同意書」を確認して押印すると、正式に和解が成立します。
判決内容に会社が納得した場合は、判決内容の金額を指定期間内に弁護士に振り込み、弁護士から弁護士費用等が引かれた金額が自分の口座に振り込まれます。
判決内容に対してどちらが不服とした場合は2週間以内に控訴することができます。控訴が行われた場合は控訴審に向けて準備を行います。
控訴審が開始します。一審と同じく、和解交渉が並行して行われます。まとまり次第裁判は終了し「同意書」締結後、弁護士経由で和解金額が振り込まれます。
控訴審の流れについては、「控訴理由書」を記載し50日以内に提出しなければなりません。
ほとんどの場合は、控訴するとしたら会社側だと思いますが、請求側が判決を不服とした場合も同様の手続きになるので、参考にしておくと良いでしょう。
もっとも、裁判に入るときに全体の流れについては説明があると思いますので、不明点があれば担当弁護士に確認しておくことをお勧めします。
控訴された側は「控訴答弁書」という「控訴理由書」に対する反論を記載した資料を提出する必要がありますので、弁護士と打ち合わせを行い、弁護士側で作成し、提出することになります。
事前打ち合わせの段階である程度の方向性が決まっていると思いますので、不明点や内容のやり取りは電話で完了すると思います。
控訴審の場合は、一審の内容が前提として進むため、1回の審理で終了するケースが多く、短期間で終了することが多いです。
一審と同じく並行して和解交渉が継続して行われます。ここで和解内容がまとまった場合はこの時点で訴訟を取り下げ、和解金額を支払うことで完了します。
会社から弁護士(代理人)宛に「同意書」が送られ、金額と内容のチェックが完了したら「同意書」を締結し、正式に和解が成立します。
その後、弁護士に会社から和解金額が弁護士に振り込まれ、弁護士費用を差し引いた金額が指定口座に振り込まれます。
判決まで進んだ場合は、控訴審の判決を待つことになります。
期間は裁判所の統計データによるとおおよそ6ヶ月以内で終わることが多いようです。
この時点でも和解交渉は継続して行われますが、これまでと違い、最高裁まで進んでいるという性質上、和解で決着するよりも最後まで争う傾向が強いようです。
また、最高裁まで進むような裁判の場合、世間の注目もそれなりに集めている事件となっているため、簡単には引き下がれないという心理も働いているのでしょう。
いずれにしても、この時点で和解が成立した場合は、控訴審の判決内容をもとにした和解内容で和解されるケースが多いようです。
まず前提として、上告が受理される可能性は極めて低く、棄却される可能性が高いということです。
棄却又は不受理の割合が97%程度、取り下げが2%、つまり最高裁が行われる確率は上告した割合の1%程度しかありません。「参考元|庶民の弁護士 伊東良徳のサイトより」
そのため、確率的には低いですが、上告が受理された場合は最高裁での口頭弁論が行われます。
和解交渉はどのタイミングでもチャンスが残されています。
ただしこの段階にまでなると和解で決着するよりも判決まで進むケースの方が多いようです。
最終的な判決が下されます。この場合の金額は確定金額となるため、会社に対して付加金が課された場合は付加金を支払わなければならなくなります。
最終的な金額が決定します。支払いの手続きは会社から弁護士経由で支払われるのは変わりません。ここまで行くケースの場合はのちの判例として残る事件となっているでしょう。
ですが、引く必要はないと思います。前例が多くなればより多くの人が救われることになると思います。
無理に最後まで戦う必要はありませんが、一矢報いるという点においては最も効果的な方法だと思います。
残業代請求がしづらいと思った時は
残業代請求の方法がわかっても、周りの目が気になったり、なんとなく罪悪感を感じる方がいると思いますが、全く気にする必要ありません。
なぜなら、すでにあなたは「借金を貸している側」だからです。
貸しているお金を返してもらうことに罪悪感を感じるでしょうか?
一言で行ってしまえば、「会社が借金を踏み倒そうとしている状態」なのです。
借金を踏み倒そうとしている相手に借金を返してもらうことは自然なことですので、堂々と請求しましょう。
参考動画|kubota
まとめ
なによりもまず言えることは、「普段からの準備」がとても重要だということです。
証拠集めの段階で結果がほぼ決まってしまいます。
そのため冒頭の「7つの鉄則」は必ず習慣にしておきましょう。
実際に使う使わないに関わらず、万が一というものは実際には「もっと高い確率」で起こります。
最終的に守ってくれるのは自分自身だけです。
弁護士に依頼しても、証拠が何もない状態では手の打ちようがありません。
未来の自分を助けるために、日々の記録は習慣にしておくようにしましょう。
以上、今回の記事が参考になれば幸いです。
それでは