今回は大企業、特にホワイト企業と呼ばれている企業なら名ばかり管理職なんてないんじゃないの?という印象を抱いているあなたにお答えします。
「関係ありません」
というのが答えです。
もちろんこれは、大企業だから多くの会社の管理職の実態が名ばかり管理職だったり、中小企業だから名ばかり管理職ばかりということではありません。
大企業や一般的にホワイト企業と言われている企業と、あなたが今いる、あるいはこれから入る会社の管理職が名ばかりではない保証はないという意味です。
「そんなことわかってるよ!」
という声が聞こえてきますが、実際にいろいろな条件を吟味していく中で忘れていってしまうものなのです。
実際私もそうでした。
給与や待遇面、業務内容といった表向きの条件に目を奪われ、実態はどうなのかという点の重要度が下がっていったのに気づきませんでした(もっともこの場合はベンチャー企業でしたが)。
私が最初にいた企業は一般的に大企業でホワイト企業と呼ばれていました。
ちなみに、職場によってはその言葉が当てはまる部署も数多くありましたが、私がいた部署に関して言えば、ブラック企業そのものでした(笑)
このあたりの話は別記事でお話ししてるので参考にしてみてください。
ほとんど全ての人が名ばかり管理職の職場

年功序列制の日本企業では特にその傾向があるかもしれませんが、一定年数を経過すると、自然と役職が上がっていきます。
私がいた大企業の職場には数え切れないほどの部長職、課長職の人がいました。
話題の働かないおじさんとか窓際とかの話はこの際置いておくとして、名ばかり管理職という実態を表現するのであれば、ほぼ全員がこれに当てはまりました。
もっとも、これに関しては会社側も注意すべき点だとは思いますが。
働き方改革で生まれた被害者
恐ろしいのは、管理職であるという点を利用してまるで使い潰すように仕事を集中させられることです(これは別の企業での話でしたが、何人かを潰すのをあらかじめ計画のうちに入れて多めの業務の割り振りを行なっていた企業もありました。怖い話ですがこういう考え方をする経営者がいることも事実です)。
昨今の働き方改革で最も負担が大きくなっているのが中間管理職である課長クラスの管理職です。
そもそも「中間」とついている時点で「管理監督者」とは程遠いと言うことをはっきりいっているわけですが。
入る企業を間違えてしまうと潰されてしまう可能性がありますので、その際の脱出装置は用意しておきましょう。
年功序列が名ばかり管理職を生み出しやすい?
年功序列制度の場合、一定年数会社に勤めると昇進していきます。
中には「昇進試験」がある会社もありますが、その「昇進試験」の受験資格自体が一定年数勤務している企業もあります。
そのため、最近は流れが変わる傾向にもあるそうですが、大企業であるほど年数と役職高さとの相関性が高くなります。が、その一方で、年齢構成がいびつな会社の場合、課長クラスや部長クラスが多く発生するという自体になります。
部長クラスは流石に少ないでしょうが、課長クラスでも、部下なしだったり、やってることは係長時代と変わらないのに、残業代が出なくなったことで給料は下がったなんて話はよく聞きます。
課長クラスや部長クラスは「管理職」のため、残業代は出ないという話はよく聞きますが、法律上残業代が出ないのは「管理監督者」です。
管理監督者とは
ここで管理監督者の定義を確認してみましょう。
管理監督者の定義は以下の通りです。
- 部門等を統括する立場である
- 会社経営に関与している
- 労働時間や休憩は自由であり、労働基準法の規定が適用されない
- 給与面で他の従業員より優遇されている
大きく分けると上記の4つですが、かなり条件としては厳しいものになります。ですが、ほとんどの人は知らずに「管理職=管理監督者」と思っています。
先ほども述べたように、「係長時代と残業時間が変わらないのに残業代が出なくなった」ということは、「管理職=管理監督者」でない場合は、もらうべき残業代をもらっていないということになります。
ほとんどは管理監督者ではない
管理監督者とは、一言で言うと「経営者と一体の立場」にあると言うことです。
具体的には、「経営会議に参加し、自分の事業についての発言権を有し、事業の予算をもち、行使する権限があり、業務時間は自由に決めることができ、残業代では埋まらないほどの報酬を受け取っている」と言う条件を満たしている必要があります。
皆さんの会社ではどうでしょうか?「管理職全員が経営会議に出席したら」会議室が人で埋め尽くされる地獄絵図になりませんか?
つまりそんなことはあり得ないのです。「経営会議のテーブルを囲んでいる人たちだけが管理監督者」なのです。
ここまでのクラスになると、おそらくは役員クラスやGMなどの事業部長クラスに限定されるでしょう。
そのため、ほとんどの管理職は(仮に部長クラスであっても)「名ばかり管理職」と言えるのです。
名ばかり管理職の証明として重要な資料に「組織図」があります。
これは組織図上の自分の名前がどこにあるかを証明する資料のためで、例えば自分の上に上司がいたり、下に部下がいないとなると、「管理監督者」の条件である「部門を統括する立場」ではないことを証明できるからです。
そのため、組織変更があった場合や自分の昇進等があった場合、自分がどの位置にいるのかを把握し、電子データや書類、あるいはメモで記録をとっておきましょう。
実際には、名ばかり管理職であることを証明するために調査が入るとおもいますが、事前に情報を弁護士に渡しておくことにより、交渉がスムーズに進みます。
実際私はこの組織図について証拠書類として渡していたため、名ばかり管理職であるという確信を弁護士にもってもらい、交渉を強気に進めることができました。

そもそも人事制度に問題がある?
ここまでみてきたように、長年の勤務に報いるための立場を与えるものになっている「管理職クラス」ですが、それが逆に「名ばかり管理職」を生み出しているとも言えます。
人事制度が誤解を与えている?
つまり、制度上の時点で「管理監督者」という定義を誤解している場合が多いといえます。もちろん会社側が確信犯的にやっている可能性は十分に考えられますが。
実際、課長クラスに上がって残業代が出ないことに疑問を持っている人にはあったことがありませんでした(心の中ではどう思っていたかはわかりませんが)。
「管理職になりたくない」や「管理職になったから残業代が出ないのは仕方がない」という言葉は聞いたことがありますが、「課長は名ばかり管理職だから残業代が出ないのはおかしい」という声を聞いたことがありませんでした。
確信犯的に制度を利用する企業
私が訴えた時の話ですが、企業側は知られたくないのか「給与の未払い分の支払い」ではなく「退職金」として処理されました。「退職金制度がないにもかかわらず」です。
少なくとも私が訴えた会社に関しては、確信犯として制度を利用していたということになりますから、今管理職の立場にある方は注意が必要です。
先々を考えていつでも訴えられるように準備だけはしておきましょう。
くれぐれも「未払い残業代」は「企業のあなたに対する借金」であり、それを「踏み倒そうとしている」という事実を忘れてはなりません。
まとめ
今現在管理職の方で、現状に苦しんでいる方は転職先に大企業やホワイト企業の評判を調べて候補にしている方も多いと思います。
大企業やホワイト企業と評判だから体制も整備されているし、名ばかり管理職の心配はないだろうという期待をするのはよくわかります。
ただ実態は「必ずしもそうではない」ということです。
当たり前のことですが、できる限り下調べをしたり、エージェントに相談したりすることで防げるかというと必ずしもそうではないというのが難しいところです。
そのため対策としては、もしそのような職場に入ってしまった場合の脱出装置を用意しておくことが、自分を守るための手段となります。
それは、自身の経験やスキルを身につけておくということだけでなく、転職活動は継続して行う、弁護士との繋がりを持っておく、などの選択肢を身につけておくことだと思います。
参考までに気になる方は弁護士費用についての記事をどうぞ
以上、この記事がみなさんの参考になれば幸いです。
それでは