心理的安全性とは?自分のキャリアにも組織にもメリットがある理由と高める方法

仕事をする上で、自分の意見や感情を素直に表現できることは大切です。

しかし、実際には、自分の発言が周囲からどう思われるか不安になったり、失敗や批判を恐れて口を閉ざしたりすることはありませんか?そんなとき、あなたは心理的安全性が低い状態に陥っている可能性があります。

心理的安全性とは、チーム内で対人リスクがなく、安全な場所であるとメンバー間で共有された状態のことです。

心理的安全性が高いと、自分の考えや気持ちを率直に発言できるだけでなく、他者の意見やフィードバックも受け入れやすくなります。また、失敗や問題を恐れずにチャレンジしたり、学びや改善の機会として捉えたりすることができます。

心理的安全性は、自分のキャリアや組織にも多くのメリットをもたらします。

Google社の調査では、心理的安全性が高いチームは効果的なチームであることが明らかになりました。心理的安全性が高いチームでは、エンゲージメントや離職率、収益性などが向上し、情報やアイデアが多く集まり、イノベーションや改善が生まれやすくなります。また、多様性を認め合うことができ、創造性やコラボレーションが高まります。

では、どうすれば心理的安全性を高めることができるのでしょうか?

この記事では、心理的安全性を高めるための施策を紹介します。それぞれの施策について具体的な方法や注意点を解説します。心理的安全性に関心を持ち、実践してみることで、自分のキャリアや組織にプラスの影響を与えることができるでしょう。

心理的安全性とは何か

まずは、心理的安全性とは何かを詳しく説明しましょう。心理的安全性という言葉は1999年にハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授によって提唱されました。同氏は、「チーム内は対人リスクがなく、安全な場所であるとメンバー間で共有された状態」と定義づけています。

対人リスク

対人リスクとは、「自分の発言や行動が周囲からどう思われるか」という不確実さや不安のことです。例えば、「質問したら無知だと思われるかもしれない」「失敗したら無能だと思われるかもしれない」「意見したら邪魔だと思われるかもしれない」「批判したら嫌われるかもしれない」というような感覚です。

対人リスクが高い状態では、自分の本音や本質を隠してしまう傾向があります。その結果、自分の能力や知識を十分に発揮できず、チームや組織に貢献できません。また、他者からのフィードバックやサポートも受け取りにくくなります。

対人リスクが低い状態では、自分の本音や本質を表現することができます。その結果、自分の能力や知識を最大限に発揮し、チームや組織に貢献できます。また、他者からのフィードバックやサポートも受け取りやすくなります。

対人リスクが低い状態こそが心理的安全性が高い状態です。心理的安全性が高いチームでは、「自分らしく働ける」「失敗しても大丈夫」「意見交換が活発」「フィードバックが有益」というような感覚を共有しています。

心理的安全性が不足している組織やチームではどんな問題が起こるか

次に、心理的安全性が不足している組織やチームではどんな問題が起こるかを例示しましょう。以下は一般的な事例です。

個人への影響

  • 質問や相談が少なくなり、不明点を解消できずミスが生じたり孤立したりする。
  • ミスや問題を報告しなくなり、後から大きなトラブルに発展する。
  • 意見交換やディスカッションが少なくなり、新しいアイデアや改善案が出てこない。
  • フィードバックを与えたり受け取ったりする機会が減り、成長する機会を逃す。
  • 多様性を認め合えず、偏見や差別が生じたりコラボレーションが阻害されたりする。

チームへの影響

これらの問題は個人だけでなくチームや組織全体に影響します。例えば、

  • 情報共有や知識伝達が十分に行われず、業務効率や品質が低下する。
  • 信頼関係や連帯感が築けず、エンゲージメントや離職率に影響する。
  • イノベーションや改善活動が行われず、競争力や収益力に影響する。
  • 多様性を活用できず、創造力やコラボレーション力に影響

心理的安全性が自分のキャリアにも組織にもメリットがある理由

心理的安全性が高いと、自分のキャリアにも組織にも多くのメリットがあります。ここでは、心理的安全性がもたらす4つのメリットを紹介します。

1. 生産性の向上

心理的安全性が高いと、自分の意見や感情を素直に表現できるだけでなく、他者の意見やフィードバックも受け入れやすくなります。その結果、チーム内で情報共有や知識伝達がスムーズに行われ、業務効率や品質が向上します。また、ミスや問題を報告しやすくなり、早期に対処することで、後から大きなトラブルに発展することを防ぐことができます。

2. ポテンシャルの引き上げ

心理的安全性が高いと、自分の能力や知識を最大限に発揮し、チームや組織に貢献できます。自分を尊重してもらえることで、やりがいや責任感を感じたり、成長する機会を得たりすることができます。また、心理的ストレスが軽減されることで、安定した精神状態で働くことができます。

3. 学習とイノベーションの促進

心理的安全性が高いと、失敗や問題を恐れずにチャレンジしたり、学びや改善の機会として捉えたりすることができます。その結果、新しいアイデアや改善案が出てきたり、イノベーションや改善活動が行われたりします。また、多様性を認め合うことができ、創造性やコラボレーションが高まります。

4. 人材定着率の向上

心理的安全性が高いと、チーム内で信頼関係や連帯感が築けることで、エンゲージメントや離職率に影響します。自分らしく働けることで職場満足度が高まったり、チームに参画できる喜びや責任感を覚えたりすることで離職意向が低下したりします。また、心理的安全性の高い職場は多様な人材を惹きつける魅力的な職場になります。

心理的安全性を高めるには

心理的安全性が高いと、自分のキャリアにも組織にも多くのメリットがあります。ここでは、心理的安全性がもたらす4つのメリットを紹介しました。

しかし、心理的安全性を高めることは簡単なことではありません。心理的安全性を高めるためには、対人リスクを排除することが必要です。対人リスクとは、無知だと思われる不安、無能だと思われる不安、邪魔だと思われる不安、ネガティブだと思われる不安の4つの不安です。

これらの不安を取り除くためには、どのような方法があるのでしょうか?記事の続きでは、心理的安全性を高める方法や注意点について解説します。

心理的安全性を高める方法

心理的安全性を高める方法は、先に解説した4つの不安を取り除かなければなりません。ここではそのための方法を解説します。

チーム全員がポジティブ思考で相互に協力し合うチームを構築する

心理的安全性を高めるには、従業員やチームメンバー同士がポジティブな関係性を築くことが重要です。ポジティブな関係性とは、互いに尊重し合い、助け合い、信頼し合う関係性です。ポジティブな関係性があれば、無知だと思われる不安や邪魔だと思われる不安は軽減されます。

ポジティブな関係性を築くためには、以下のような行動が有効です。

  • 他者の意見や感情を聞く姿勢やスキルを身につける
  • 他者の貢献や成果を認めて称賛する
  • 他者のミスや失敗を責めずに支援する
  • 他者からのフィードバックや批判を受け入れて改善する
  • 他者に対してオープンで正直である

リーダーや上司はメンバーを尊重する

心理的安全性を高めるには、リーダーや上司の役割も重要です。リーダーや上司はメンバーに対して尊重や信頼を示し、自律や自発性を促すことで、無能だと思われる不安やネガティブだと思われる不安を減らすことができます。

リーダーや上司がメンバーを尊重するためには、以下のような行動が有効です。

  • メンバーの能力や知識を信頼して任せる
  • メンバーの意見や提案を受け止めて評価する
  • メンバーの成長や目標達成をサポートする
  • メンバーの失敗や問題提起を許容して学びにつなげる
  • メンバーと対等な関係でコミュニケーションする
  • さまざまな価値観や意見など、多様性を認め合う

心理的安全性を高めるには、組織やチーム内で多様性(ダイバーシティ)を認め合うことも必要です。多様性とは、年齢や性別、国籍や文化などの表面的な違いだけでなく、価値観や考え方、スタイルやアイデアなどの深層的な違いも含みます。多様性を認め合うことで、自分らしく働ける環境が作られます。

多様性を認め合うためには、以下のような行動が有効です。

  • 他者の違いや個性を尊重し受け入れる
  • 他者の視点や立場に立って考えたり感じたりする
  • 他者と協力して共通の目標に向かう
  • 他者から学ぶ姿勢や好奇心を持つ
  • 他者に対して偏見や差別をしない

入社後のフォローをチーム全体で行う

心理的安全性を高めるには、新入社員や異動者などチーム内で新しく働き始めた人へのフォローも重要です。新しく働き始めた人は周囲に馴染むまで時間がかかります。その間に心理的安全性が低い環境で働くことになれば、ストレスや不満が溜まります。そのため、チーム全体で新しく働き始めた人へのフォローを行うことで、早期に心理的安全性を感じさせることができます。

新しく働き始めた人へのフォローとしては、以下のような行動が有効です。

  • 歓迎会や交流会などで親睦を深める
  • 業務内容やルールなどの説明や指導を丁寧に行う
  • 質問や相談への回答やアドバイスを快く行う
  • フィードバックや評価を適切に行う
  • 仲間入り感や居場所感を与える

1on1(ワンオンワン) をうまく活用する

心理的安全性を高めるには、1on1(ワンオンワン) をうまく活用することも有効です。1on1(ワンオンワン) とは、上司(マネージャー) と部下(メンバー) の二人だけで行う定期的な面談のことです。

1on1は、上司と部下が定期的にマンツーマンでミーティングをすることで、部下の成長を促し、組織力を高めるマネジメント手法です。しかし、1on1を実施するだけでは効果は出ません。1on1を効果的に行うためには、以下の2つのポイントに注意する必要があります。

  • 1on1の目的や方法を部下に明確に伝える
  • 1on1で部下から話を聞き、コーチングやフィードバックを行う

まず、1on1の目的や方法を部下に明確に伝えることが重要です。1on1は、部下の成長促進と企業の組織力強化が目的であり、上司と部下の対話型コミュニケーションであることを理解してもらう必要があります。また、1on1で話す内容や頻度、場所なども事前に決めておくことで、部下が準備しやすくなります。1on1で話す内容は、業務に関する悩みからプライベートな話題まで幅広く扱うことができますが、部下が話したいことや相談したいことを尊重することが大切です。

次に、1on1で部下から話を聞き、コーチングやフィードバックを行うことが重要です。上司は、部下の発言を傾聴し、部下の考えや気づきを引き出す質問やアドバイスを行います。また、部下の長所や課題点に対しても適切なフィードバックを行い、成長を実感させます。上司は、部下の発言時間を多く取り、自分の意見や指示は控えめにすることがポイントです。理想的な発言時間の割合は、部下が全体の6~7割、上司が3~4割です。

以上のように、1on1は上司と部下の信頼関係を築きながら部下の成長を促すマネジメント手法です。しかし、 1on1にもデメリットがあります 。例えば、

  • 上司の時間的な負担が増える
  • 部下が自己開示することに抵抗感を持つ
  • 上司がコーチングやフィードバックのスキルを持っていない

などです。これらのデメリットを克服するためには、

  • 1on1の時間や頻度を適切に設定し、スケジュール管理を徹底する
  • 部下に安心感や信頼感を与えるために上司も自己開示する
  • コーチングやフィードバックのスキルを習得するために研修や勉強会などに参加する

などの対策が必要です。

心理的安全性につながる評価方法や目標設定方法を紹介

心理的安全性を高めるためには、組織のシステムや文化だけでなく、個々の従業員の評価方法や目標設定方法も見直す必要があります。評価方法や目標設定方法が不適切だと、従業員は自分の能力や貢献度に見合わない扱いを受けたり、過度なプレッシャーを感じたりすることで、心理的安全性が低下する可能性があります 。

心理的安全性につながる評価方法や目標設定方法としては、以下のようなものがあります。

評価方法は、従業員の成果だけでなく、プロセスや行動も考慮する

例えば、従業員がどのように仕事を進めたか、どのようにチームと協力したか、どのように学びや改善を行ったかなどを評価することで、従業員は自分の仕事に対する誇りや自信を持つことができます。

評価基準は、明確で公平で透明であることを従業員に伝える

例えば、評価基準や評価方法を事前に従業員に説明し、質問や意見を受け付けることで、従業員は評価に対する納得感や信頼感を持つことができます。

評価結果は、具体的で具体的でポジティブなフィードバックを伴う

例えば、評価結果を具体的な数字や事例で示し、従業員の長所や成長点を称賛し、課題点や改善点に対しても励ましや支援を提案することで、従業員は自分の仕事に対するモチベーションや向上心を持つことができます。

目標設定は、従業員と協議して合意する(SMART原則に基づく)

例えば、目標設定は従業員と上司が一緒に行い、SMART原則(Specific:具体的・明確, Measurable:測定可能, Achievable:達成可能, Relevant:関連性・重要性, Time-bound:期限付き)に基づいて目標を決めることで、従業員は自分の目標に対するコミットメントや責任感を持つことができます。

目標達成に向けて、定期的に進捗や課題を共有し、サポートやコーチングを行う

例えば、目標達成に向けて週次や月次などの定期的なミーティングを行い、従業員の進捗や課題を共有し、上司からサポートやコーチングを受けることで、従業員は自分の目標に対する達成感や挑戦意欲を持つことができます。

これらの評価方法や目標設定方法を実践することで、従業員は自分の仕事に対する責任感や達成感を高めることができます。また、上司と部下の信頼関係も強化され、心理的安全性が高まります 。

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おわりに

この記事では、心理的安全性とは何か、どんなメリットがあるか、どうやって高めるかについて解説しました。心理的安全性とは、チーム内で対人リスクがなく、安全な場所であるとメンバー間で共有された状態のことです。心理的安全性が高い組織では、従業員のエンゲージメントや生産性が向上し、イノベーションや改善が生まれやすくなります。

心理的安全性を高めるためには、組織のシステムや文化だけでなく、個々の従業員の評価方法や目標設定方法も見直す必要があります。また、個人としても仕事を学習の機会と捉えたり、自分のミスを認めたり、積極的に質問したりすることで、心理的安全性を高めることができます。

心理的安全性は、楽なだけの組織ではありません。むしろ、目標達成に向けてチャレンジし合える組織です。チームメンバーは互いに信頼し、尊重し、協力し合います。そうしたチームは、仕事の質や効率を高めるだけでなく、仕事の楽しさややりがいも感じることができます。

あなたの組織に心理的安全性はありますか?もし疑問に感じたら、ぜひこの記事で紹介した方法を試してみてください。心理的安全性を高めることで、あなたもチームも組織も成長することができます。

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