ベンチャー企業で働くあなたへ。残業代請求は権利です!

ベンチャー企業で働くということは、多くの魅力があります。新しい技術やサービスに携われること、自分のアイデアや能力を発揮できること、将来的な成長性やストックオプションが期待できることなど、ベンチャー企業ならではのメリットがたくさんあります。

しかし一方で、ベンチャー企業で働くということは、多くの苦労も伴います。とくに残業代請求が難しい環境にあることは、ベンチャー企業で働く人にとって大きな悩みの一つかもしれません。

ベンチャー企業は体制が整っておらず、資金も限られているため、コストを抑えようと従業員に経験や将来性という名目でサービス残業を強いることが多いです。また、従業員自身も仕事に情熱を持っており、会社のために頑張ろうと思っているため、残業代請求をすることに抵抗感を持つこともあるかもしれません。

しかし、これは間違った考え方です。残業代請求は労働者の権利であり義務です。ベンチャー企業だから許されるものではありません。労働者は我慢せずに堂々と残業代請求をすべきです。

この記事では、固定残業代(みなし残業)制度の落とし穴や残業代請求の方法・注意点を詳しく解説します。ベンチャー企業で働くからこそ、自分の権利を守りましょう!

固定残業制(みなし残業)の落とし穴

固定残業制とは

これは「月給◯◯円=基本給+固定時間分(例えば20時間分)の残業代」というように月給内に一定時間分の残業代が含まれているという制度です。この制度は、残業時間が一定であることを前提としており、固定時間分の残業代は毎月変わらずに支払われます。しかし、実際には、固定時間分よりも多く残業することが多い場合もあります。その場合、超過分の残業代は別途支払われるべきです。

固定残業制の悪用

しかし、ベンチャー企業では固定残業制を悪用して超過分の残業代を支払わないことが多くあります。これは違法です。固定残業制は、本来払わなければならない残業代を減らす効果はありません。また、残業代が明確に区別できない場合や不足する差額が払われない場合も、固定残業制は無効です。

つまりベンチャー企業で働く人は、自分の実際の労働時間や給与明細をしっかり確認し、固定時間分以上に働いている場合は超過分の残業代を請求する権利があります。

固定残業制が無効とされるケース

実際に、裁判例では、固定残業制が無効と判断されるケースが多く見られます 。裁判所は、以下の2つの条件を満たさない場合は、固定残業制を無効とみなしています。

  • 実質的に残業の対価であること
  • 給料のうち残業代部分が判別できること

つまり、固定残業制を有効にするためには、契約書や給与明細などで明確に基本給と残業代を区別し、かつ実際に働いた時間に見合った金額を支払う必要があります。しかし、ベンチャー企業ではこのような条件を満たすことが難しい場合も多いでしょう。

固定残業で行政指導されたケース

固定残業代で行政指導を受けた事例
厚生労働省「賃金不払残業の解消のための取組事例

厚生労働省の資料によると、「私立学校で基本給の4%を固定残業代を一律で設定していたが、実態の残業時間は4%分よりも多いため、その差額分を支払うように指導を行なった」という記録があります。つまり、これまでみてきたように、固定残業代で設定している内容ではなく、あくまで「実態」が重要であるということです。

残業代請求の方法

残業代を請求する方法は以下の通りです。

証拠を集める:

残業時間を示すものと実際に受け取った給与明細などを用意します。残業時間は、勤怠管理システムやタイムカード、メールやチャットの履歴、同僚や上司への報告などで証明できます。

基本給と本来の残業代を計算する

基本給は、固定残業代が含まれている場合はその分を除いた金額です。本来の残業代は、基本給に法定割増率(25%以上)や就業規則などで定められた割増率(法定以上)をかけた金額です。

未払い残業代を計算する

未払い残業代は、本来の残業代から固定残業代以外の手当てや賞与などを差し引いた金額です。この金額が正しいかどうかは、労働基準監督署弁護士などに相談することができます。

会社に交渉する

未払い残業代の支払いを求める書面(内容証明郵便など)を会社に送付します。書面には、自分の氏名や所属部署、請求期間や請求金額、支払期限などを記載します。会社と話し合って解決できれば良いですが、拒否されたり無視されたりした場合は次のステップへ進みます。

裁判所に申し立てる

労働審判制度や民事訴訟制度などで裁判所に申し立てます。裁判所では、自分と会社の主張や証拠などを審理して判断します。裁判所から支払命令が出されれば、会社は未払い残業代を支払わなければなりません。

以上が超過分の残業代を請求する方法です。

裁判手続きの種類と費用

残業代を請求する場合の費用と期間は、裁判手続の種類によって異なります。

労働審判制度

この制度は、労働紛争を迅速かつ簡易に解決するためのものです。申立てには、訴状や申立書などの書面と手数料が必要です。手数料は、請求金額に応じて変わりますが、最低でも1万円以上かかります。期間は、原則として3回以内の審判で終了しますが、和解や不服申し立てなどで長引くこともあります。

民事調停

この制度は、当事者同士が話し合って紛争を解決するためのものです。申立てには、調停申立書などの書面と手数料が必要です。手数料は、請求金額に応じて変わりますが、最低でも5千円以上かかります。期間は、平均して約4ヶ月程度ですが、和解や不服申し立てなどで長引くこともあります。

民事訴訟

この制度は、裁判所が当事者の主張や証拠を審理して判断するものです。申立てには、訴状などの書面と手数料が必要です。手数料は、請求金額に応じて変わりますが、最低でも2万円以上かかります。期間は、平均して約1年半程度ですが、控訴や上告などで長引くこともあります。

以上が裁判所に申し立てる場合です。

労基署や弁護士への依頼

残業代請求をする時、労働基準監督署や弁護士へ相談することが現実的です。手続きとしては、まずは労基署に訴えるのが良いでしょう。労基署で回収ができなかった場合は弁護士を利用するという選択肢を持っておくと良いです。

労働基準監督署

労働関連法令を会社が遵守しているか監督する行政機関です。相談や依頼は無料で行えます。ただ、調査や指導などの行政処分を行っても、会社がそれに従うかどうかは保証されません。匿名か実名かを選ぶことができますが、匿名で訴えた場合は行政指導になる確率が低く、実名で訴えた場合は会社に知られるリスクがあります。

弁護士

個人的な労働問題について対応してくれる専門家です。相談する場合は労基署や労働組合に相談するよりも費用が高くなることが多いですが、会社との交渉や訴訟の手続きなどを代理で行ってくれるため、解決までの時間的な負担や精神的な負担は少ないでしょう。また、相談したことは秘密にされます。弁護士費用は回収額の20%程度と考えておけば良いでしょう。

(旧)日本弁護士連合会報酬基準
(旧)日本弁護士連合会報酬基準

以上が裁判所に申し立てる前に考えるべきことです。弁護士へ相談する場合は私も利用した【日本労働弁護団】をご紹介します。日本全国に支部があり、労使問題に強い弁護士が対応してくれます。

残業代請求をする際には、専門家の助けを借りることも有効です。特にベンチャー企業では、会社側が残業代請求に応じない場合や反発する場合もあります。そのような場合は、労働基準監督署(労基署)や弁護士などに相談することで、適切なアドバイスや支援を受けることができます。

まとめ

ベンチャー企業で働くあなたは、自分の権利を守るために残業代請求をすることができます。固定残業制の落とし穴や残業代請求の方法・注意点を知っておくことで、自分の働いた時間に見合った対価を得ることができます。

また、残業代請求はベンチャー企業にもメリットがあります。残業時間が減ることで、従業員の生産性や健康状態が向上し、離職率や欠勤率も低下します。さらに、法令遵守や社会的信用も高まります。

ベンチャー企業で働くからこそ、自分の権利を守りましょう!

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

それでは

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