今回は残業代の未払いがいかに悪質なのかについてお話しします。
そんなのは言われなくてもわかっているとお思いなのは重々承知です。
でもわかっていても行動まで結びつけるのが難しいというのもまた人情というもの。
みんな我慢しているからあなたも我慢しなければならないと思っていませんか?
昔からそうだからと、無理やり納得することにしていませんか?
自分にはここしかないからと、必要以上に自分を卑下していませんか?
これら全ての言葉を否定していきたいと思います。
はっきりといいきれます。
「残業代未払いの罪はお金だけの問題ではありません!」
あなたから、あなたの家族から、あなたの大切なものから、あらゆる時間を奪っているのです。
そして、現在の状況をそのままにしておくことで、これからあなたと同じ環境に入る人たちからも、お金と時間を奪っていくのです。
残業代未払いは違法であり、多くの労働者が被害に遭っています。しかし、多くの場合、労働者は自分の権利を主張しにくく、会社から圧力を受けたり、解雇されたりする恐れがあるために黙って我慢してしまいます。
しかし、このような状況を放置しておくと、自分だけでなく他の同僚や後輩も同じ目に遭う可能性があります。また、会社は法律違反を繰り返すことで利益を得ることができます。これでは公平な競争や健全な経済活動が阻害されてしまいます。
そこで、残業代未払いに対して有効な手段として考えられるのが、「労基署へ告発する」という方法です。労基署へ告発することでどんなメリットがあるのか?それでは見ていきましょう。
目次
未払い残業代とは何を意味するのか?
「残業代未払い」とは、労働者が働いた時間に対して法律で定められた賃金が支払われていないことを指します。これは労働基準法に違反する違法行為であり、労働者の権利を侵害するものです。
参考|残業代など未払いの企業1000社余り 3億円以上を支払う企業も
残業代未払いは日本では深刻な問題となっています。厚生労働省によると、2021年度に労基署が監督指導した結果、残業代未払いが是正された企業は1,069社で、合計65億781万円もの賃金が支払われました。この数字は氷山の一角であり、実際にはもっと多くの企業や労働者が残業代未払いに苦しんでいると考えられます。
未払い残業代はあなたへの借金
みなさん想像してみてください。
数百万円、1千万円の金額と聞いたときにどう思いますか?
大金ですよね?
ではこの金額を誰かに貸したとしましょう。
その金額をもし踏み倒されたとしたら?
その人との関係は崩れ、訴えてでも取り返そうとするはずです。
「未払い残業代」という言葉だとわかりにくいと思いますので言葉を言い換えてみましょう。
未払い残業代
▼
あなたへの借金
これならどうでしょうか?
会社はあなた方に残業代を「払わない」のではなく、会社があなた方にしている借金を「返さない」のです。
あなた方はすでに労働力という価値提供をしているのですから、会社はそれに対して報酬を支払わなければなりません。
つまりこの報酬が、言い換えると「借金の返済」なわけです。
「残業代未払い」がいかに悪質な「違法」であるか理解できたでしょうか?
企業は言葉を変えることで「借金の返済から逃げている」のです。
未払い残業代が皆さんへの借金である証拠に、利子(利息)がつきます。
この利子は在職中のものと退職後のものの2種類存在します。
ただし注意が必要なのは犯罪には時効が存在するということです。
残業代請求の時効は3年(2022年1月現在)です。
将来的には5年に延長される予定とのことなので、法改正にも注意しておきましょう。
遅延損害金
(在職中)
年率3 %
遅延利息
(退職後)
年率14.6 %
いかがでしょうか。かなりの利子ですよね。
この利子が未払い期間に応じて加算されますので、実際に請求する金額はもらっていない残業代よりも多い金額になります。
残業代未払いが自分や他人に及ぼす影響やリスク
残業代未払いはあなたの時間とお金を奪っています。残業代未払いを受け入れることは、自分自身の価値を低く見積もることにつながります。また、生活費や貯金が減ることで経済的な不安や困難が生じます。
さらに、残業代未払いは健康や家庭生活にも悪影響を及ぼします。長時間労働することでストレスや疲労が蓄積し、心身の不調や病気を引き起こす可能性があります。また、家族や友人と過ごす時間や趣味などプライベートな時間が削られることで人間関係や精神的な充実感が失われます。
更に悪いことに、残業代未払いは法的なトラブルに巻き込まれるリスクもあります。例えば、会社から解雇されたり退職したりした場合、過去の残業代を請求する権利を失う可能性があります(時効3年)。また、会社から嫌がらせや圧力を受けたり証拠を隠滅されたりする恐れもあります。
残業代未払いで得をするのは誰か
ではこうすることで誰が得をするのでしょうか?
得をする人がいるからこのような事態が起きるのです。
それは誰か?
「経営陣です」
彼らの報酬はお金だけではありません。
彼らは「年収」という括りの報酬体系で報酬を考えてはいません。
株式や経費も彼らにとっての報酬でもあるのです。
株式を持っておけばその株を売買したり、上場したりしたときに大きな価値となります。
それはもう普段もらっている年収や役員報酬なんて比べ物にならない額です。
経費は小さな会社であれば経費という名目で、個人の用途で費用を使うことができます。
交際費だったり会社の社用車だったり、名目はいろいろです。
従業員である皆さんとは違う世界に生きているのです。
その経営陣はさらに会社(つまり自分)から利益が逃げないように、従業員の給料を抑えようとします。
それが一番手っ取り早く、我慢をしてくれることをわかっているからです。
それが仕方がないと感じている人たちは、経営陣の狡賢さを認めているようなものです。
どうですか?仕方ないことですか?
そうは思いませんよね?
ですから声を上げなければならないのです。
会社としてしっかり従業員に給料を払った上で、利益を出せる体質にする仕組みやビジネスを作り出すことが経営陣の仕事なのです。
どうやって残業代請求すれば良いのか?
経営陣対し、みなさんは現実を突きつけなければなりません。
周りの空気や、なんとなくで見過ごせる問題ではないのです。
空気に押されて周りに同調するということはあなたも、これから入ってくる新人や社員に同じ目に合わせる加害者になることでもあるということを忘れてはなりません。
残業代請求するということはそれだけの意味があることなのです。
あなたの感じている違和感は間違っていません。
「労働基準監督署」は「労基署」と略称で呼ばれることも多く、「労働基準法」や「最低賃金法」などの法律を守っているかどうかを監督・指導する行政機関です。この法律違反について知った場合は誰でも内部告発(通報)することができます。
内部告発(通報)する方法は電話やメール、窓口などがあります。また匿名でも可能です。ただし匿名だと証拠や詳細情報が不足している場合は対応しづらくなる可能性もあるため注意が必要です。
内部告発(通報)した後はどうなるのでしょうか?
証拠を持って労働基準監督署へ残業代請求の依頼をしにいきましょう!
行き先は役職ごとに異なると思いますので、下記のリストに訴えるとスムーズにいくと思います。
- 部長クラス|弁護士
- 課長クラス|弁護士
- 係長クラス|弁護士 or 労働基準監督署
- 役職なし|労働基準監督署
- 一般社員|労働基準監督署
- 派遣社員|労働基準監督署
内部告発(通報)した内容に応じて、労基署は以下のような対応を行います。
- 立入調査:労働者や使用者に事情聴取を行ったり、賃金台帳や勤務表などの書類を確認したりすることで、実態を把握します。
- 是正勧告:法律違反があると判断された場合、使用者に対して法令に従うように勧告します。これは強制力がないものですが、無視すると刑事罰や行政処分の対象となる可能性があります。
- 告発・告訴:重大な法律違反があると判断された場合、使用者を検察庁や警察に告発・告訴します。これは刑事事件として扱われます。
このように、労基署へ告発することで、会社に対して法的な圧力をかけることができます。また、労基署は労働者の個人情報や内部告発(通報)した事実を秘密にする義務があります。そのため、会社から解雇されたり嫌がらせされたりするリスクは低くなります。
労基署へ告発することにもデメリットがあります。それは以下のようなものです。
- 時間がかかる:立入調査や是正勧告などの手続きは時間がかかる場合があります。また、会社側が納得しない場合は裁判所に提訴する必要もあります。
- 証拠が必要:残業代未払いを立証するためには、残業時間や給与明細などの証拠が必要です。しかし、会社側がこれらの書類を隠したり改ざんしたりする場合もあります。
- 人間関係が悪化する:会社から圧力を受けるだけでなく、同僚や上司からも冷遇されたり孤立させられたりする可能性もあります。
以上のことから分かるように、「労基署へ告発する」という方法はメリットもデメリットもあります。そのため、この方法を選択する際には注意深く検討しましょう。
もし、会社に居づらくなるなら転職を考えてください。世の中にはたくさんの企業があり、相談をしてくれる仕組みができています。今いる会社の常識があなたの中での常識とならないように、常に外にも目を向けなければなりません。
多くの企業との接点を持つことです。終身雇用は終わりを迎え、これからは今いる企業で実績を出し、キャリアを積んで転職することが普通になっていきます。
転職は勇気がいることですが、一歩踏み出せば広い世界に飛び出すことができます。退職しづらいなら退職代行という手があります。管理職の地位を手放すのが惜しいのなら、ハイクラス専門の転職エージェントを使うのもいいでしょう。
ブラックな環境に慣れてしまわないことが重要です。
まとめ
残業代未払いは違法であり不公平であることは間違いありません。しかし、「労基署へ告発する」という方法は一筋縄ではいきません。メリットだけでなくデメリットも考えておく必要があります。
また、「労基署へ告発する」以外にも残業代未払いに対処する方法はあります。「弁護士へ相談する」「和解交渉を行う」「裁判所へ提訴する」などです。
これらの方法もそれぞれ特徴や条件があります。どの方法が自分にとって最適かは一概には言えません。そのため、自分の状況や目的に応じて、適切な方法を選択することが重要です。
残業代未払いに悩む労働者は多くいます。しかし、自分の権利を放棄してしまうことはありません。法律や制度を利用して、自分の権利を守ることができます。
以上、今回の記事がみなさんのお役に立てれば嬉しいです。
それでは