今回はうつ病になって初めてわかったことの体験談と、うつ病に関する理解を深めていただくためのお話しします。
- 「うつ病は甘え」
- 「うつ病になるやつは弱い」
- 「うつ病は神経質な人間がなるもの」
- 「うつ病は心の風邪」
こんな声を聞きます。実際私もなるまでは同じように思っていました。
実際なってみてわかりましたが
「全て違います」
ちょっと違うというレベルではなく、
「本質的」に違うものです。
うつ病は一言で言うと
「脳の病気」です。
症状は人それぞれですが、この部分だけは共通しています。
脳に負荷がかかり続けた結果、正常に機能しなくなります。
この状態は誰もがなる可能性があります。もちろん個人差はありますが、強い弱いの問題ではないのです。
同じことをしていても一人一人感じ方が違うように、負荷の度合いは変わってきます。同じ仕事をしていても得意不得意で成果も負荷も変わるのと同じです。
例えば長時間労働による負荷、睡眠不足、人間関係のストレス、私生活での心配事など、常に頭を使っている状態でリラックスすることができない状態が続くと、過重な負荷が脳にかかり、ブレーキが壊れるのです。
そのため脳が体をコントロールすることができず、さまざまな症状が出てきます。
目次
症状編
- 意欲低下|何もやる気が起きない。というか自分という存在を認識できない。
- 倦怠感|体が常に重く、疲れを感じている。
- 頭痛|頭がオーバーヒートした状態となり、鈍い痛みが続く。
- 睡眠障害|強い眠気があるが、眠ることができない。眠れてもすぐに起きてしまう。
- 思考力の低下|言語の認識、文章の読解がうまくできない。考えることができない。
- めまい|平衡感覚を失い、立ち上がることができない。いつ転倒してもおかしくない。
なにかをやろう、やりたいという意欲が全く湧きません。
テレビを見る、ゲームをする、遊びに行く、本を読む、友達と会う、食事に行く、などなどさまざまなことに興味を失い、とにかくエネルギーを使う行動を避けるようになります。
そもそも体に活動するエネルギーがないためですが、例えるなら正常な人なら休めば紙コップにエネルギーという水が注がれ、回復していきますが、その紙コップが穴だらけになっているため、いくら休んでもエネルギーが回復しないという感じです。
何かをしたいという欲求だけでなく、日常生活の習慣(例えば、シャワーを浴びたり、歯を磨いたり、食事をするなど)すらも苦痛を感じるようになります。
みなさんはガス欠の状態になったことはあるでしょうか?長時間走り続けた後だったり、大きなプロジェクトが終わった後などエネルギーを使い果たした後の状態の感覚は多くの方が感じたことがあると思います。
「その状態がずっと続きます」
意欲低下とも繋がってくる話ですが、この倦怠感は常に付きまとってきます。当日の朝は倦怠感がなく、「今日は調子がいいな」と思っていても、次の瞬間にはこの強い倦怠感に襲われ動けなくなる、なんてことは日常茶飯事です。
スケジュールを立てて行動したり、人と約束をしたりすることのハードルがとても高いです。だってその時になってみないとわからないんですから。
倦怠感は長期間続き、治療から2年経った今では最初よりましになったものの、突然襲われることがあります。予測ができないことがうつ病の人の体調管理を難しくしています。
うつ病患者の仕事復帰は慎重にならないといけません。
調子の良い日と悪い日の波が大きい上に、週5日働くことはとてつもなく大きな負担になります。無理をして職場復帰をして再発する人は多いです。
再発率
1回目が60%
2回目は70%
3回目は90%
※再発するたびに再発率が上昇する
会社によって休職制度がありますが、休職期間に間に合わせようと無理をするケースがこの最初に拍車をかけています。
制度の期限を意識するのではなく、自分の体調を優先して行動しましょう。
退職をすることは勇気が入りますが、長期的に考えた時にそのブランクは必要なものだと考えることが必要です。
労災申請は必ず行いましょう。労災認定のハードルは高い(30%程度)ですが、寛解まで面倒見てくれます。金銭的負担がなくなることは心理的負担の軽減につながります。もし認定されなくても、傷病手当金は継続して受給できますので、申請すること自体に損はありません。
私の場合は初期症状として現れたのが、この頭痛です。といっても通常の頭痛とは少し感覚が違います。疲労といった方が良いでしょうか。一日中頭を使い疲れ切った感覚はわかるでしょうか?その感覚に近いです。
その疲労が強くなり、肩こりのような感覚がそのまま頭の中にある感じです。
何かに集中したり、話を聞いたり、考え事をしたりするとその感覚は強くなり始めます。そして何よりリラックスすることができません。
なにもしていない状況でも頭が勝手に回転している状態、「暴走状態」になります。
体を動かそうが、寝ようとして横になろうが、常にこの感覚が付きまといあらゆる行動を妨げます。
この状態になると既に回復まで長期間を要する「うつ状態」となっています。
うつは脳のダメージの蓄積により生じる病なのです。
頭痛が強くなることにより、眠ることができません。
よく「何か物事が心配で眠れない」「眠ろうとすると不安になって眠れない」など眠れない時によく言われますが、これは頭が「暴走状態」にあるからです。
活動と、休息のスイッチが壊れ、常にフル回転の状態となりますが、ただ回転しているだけで思考にはつながりません。
その状態になると、「睡眠に入る」ことができなくなり、「夜中に目が覚める」ことが多くなります。
さらに悪化すると「眠ることそのものができない」状態にまでなります。
ここまでくると体力の回復はできず、疲労が強くなり眠気も強くなる一方となりますが、眠ることができないので、ずっとこの苦しみを味わい続けなければなりません。
結果、日常生活を送ることすら困難な状態となるのです。
何かに集中する、人の話を聞いて理解する、文章を読み理解する、これらの活動全てが停止します。
頭は回転しているのです、ですが回転しているだけで噛み合わない状態ですので理解することができません。同じことを何度も聞いたり、なにをしたらいいかわからなくなったりしてパニック状態に陥ります。
仕事ではミスを連発するようになり、アイデアも生まれません、なんとなく業務をこなすだけのマシンとなります。
心身ともに追い詰められた状態が続くため、体調は悪化する一方となるのです。
この症状が出たときは「最終段階」といった感じでした。
今の自分の意識を糸一本でなんとか繋ぎ止めているような感覚です。
平衡感覚はなくなり、まっすぐ歩くために強い意識が必要な状態です。
そしてある朝、立ち上がった時に目の前がぐるぐると周りそのまま座り込んだ後は立ち上がることはできませんでした。
それからはしばらく寝たきりの状態が続きますが、寝転んでいるだけで眠ることもできないので、ただひたすらめまいや頭痛がなくなることを願いなら横になり続けます。
めまいは一番最初に症状が収まりますが、それでも1、2か月はこの症状に苦しみました。
この状態までいくと数年の治療期間が必要になると思います。現に私は治療から2年以上経ちましたが、いまだに治療中の状況です。
労働時間が長かったり日常生活でストレスを感じている方で上記の症状がある方。すぐに病院に行ってください。
かなり長期の治療を必要とする(少なくとも半年〜数年)ため、何よりも優先すべきです。
私は上記の症状がありながら働き続け、結局体を動かすことができない状態にまでなり、2年以上も治療に費やしています。
難しい判断であることは百も承知ですが、長い目で考えると1年くらいのブランクは大したことないと考えるべきです。
ここまでの症状はないが、なんとなく当てはまる方も要注意です。
こういった症状は突然現れるため、日常から負担を軽くするか、病院に行き一度診察を受けてみるのも検討してみるべきでしょう。
会社のメンタルヘルスは期待できない
会社で安全衛生委員会等が開かれ、残業管理や産業医面談を行っている企業もあると思いますが、形骸化しているところも多くあるため、役割を果たしていません。
私は実際の残業時間と症状について「もっと自覚症状の欄を軽いものにしろ」と指示を受けたことすらあります。※ちなみに上場企業です。上場企業だから安心という考えは捨てましょう!
産業医面談を受けたとしても、産業医の指示に従うかどうかは企業の任意のため、対策を取られることは期待できないでしょう。
最終的に何かあっても彼らは責任を取ってはくれませんから、自分の身は自分で守ることを心がけましょう。
行動編
- 食事|食欲がない。食べても満足感が得られない。
- 睡眠|強烈な眠気があるにも関わらず眠れない。これが一番つらい。
- 入浴|そもそもする気が起きない。立ち上がるのも一苦労。
- 運動|外に出るのは大きなハードルがある。なんとか食事を買いに行くくらい。
- 読書|文字が読めない。ただの画像としてしか認識できない。
- 性欲|全くなくなる。勃起不全になる。
食欲が全くなくなります。
正確には他の症状が辛すぎて、食欲にまで意識が回らないといった方が正しいでしょうか。
簡単なものなら食べることができますが、自炊なんてとてもできません。
どうしても栄養も偏り、高カロリーなものを摂取することが多くなるため、太りやすくなります。
これが一番しんどいです。
眠気は寝れない分だけ強くなるのに全く寝れなくなります。
一睡もできないまま会社に行くこともありました。
病院で一番最初に先生に言った言葉が睡眠薬をくれとだったほどです。
いきなり強い薬を使うことができないので、徐々に薬を強くしていき、「眠れたな」と感じることができるまで半年近くかかりました。
今も苦しんでいるのがこの睡眠です。
薬がないとまともに寝られません。
眠気はずっとありますが、眠りに入ることができません。眠りに入れてもすぐに目が覚めてしまいます。そのまま睡眠不足で起床。
この状態が続きます。
日中の生活にも影響が出るのでやっかいな症状です。
「風呂に入る元気がない」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないのでしょうか。
これは本当にそうなります。
シャワーを浴びるのは数日に一度。それもシャワーを浴びただけで疲れ切ってしまうほどです。
とにかく気力がなく体が動かない状態となります。
日中に動ける時間がわずかなため、どうしても優先順位が下がります。
いうまでもなくできません。
うつ病になった方が太る原因の多くはここにあるのではないでしょうか。
私もうつ病になってからピーク時には20キロ以上太りました。
徐々に散歩から始め、運動を続けていくことである程度は戻すことができましたが、激しい運動をすると、その反動で動けなくなってしまいます。
リハビリには一番現実的な手段だと思います。
しかし、最初は文字を読むということが不可能な状態でした。
文字を文字として認識できず、黒い点が並んでいる画像として脳が認識します。文章が全く頭に入ってきません。
無理に読もうとすると頭痛がするのでそこで中断です。
そこから一行ずつ読めるようになっていき、リハビリを継続することで、なんとか本を読むレベルまでは回復しました。
全くなくなります。
そもそも興奮することができません。
なんとか処理を試そうとしたことがありますが、脳にブレーキがかかり、頭痛に見舞われます。
興奮状態になると脳に負担がかかり頭痛が強くなります。
それだけでなく、勃起不全となるため性処理する元気がなくなりますし、性欲そのものが失われていきます。
パートナーがいる方はこの点で大きく苦労してしまうかもしれません。
まとめ
以上のように気合いでなんとかなるものでも、気分の持ちようでもなく、脳の障害であるということがはっきりと分かった経験でした。回復のためには、ゆっくりと日常生活を取り戻し、焦って何かを始めたり、無理をして頑張ることは脳に大きな負担となるため控えておくのが良いでしょう。
うつ病はよく「心の風邪」などと言われますが、私に言わせれば「脳の前十字靭帯断裂」くらいの重い障害だと思っています。
一度なってしまうと元の健康な状態に戻ることは難しく、この体と長く付き合っていかなければならなくなります。
そうならないためにも普段から自分の体調や精神状態、職場環境に目を向け、自分のストレス状態を素直に感じてあげることが自分を大事にします。
それが結果的に自分の周りの人に対しても迷惑をかけずに共存していくことができるようになると感じました。
以上がうつ病の症状ですが、仕事が原因でうつ病になった方は労災申請を行いましょう。認定のハードルは高いですが、補償が手厚いので申請だけはしておくことをオススメします。
以上、この記事がみなさんのお役にたてれば幸いです。
それでは