ブラック企業とは、労働者を過酷な条件で働かせたり、法令遵守や人権尊重などのコンプライアンス意識が低い企業のことです。ブラック企業に入社してしまうと、長時間労働やノルマ達成のプレッシャー、パワハラやセクハラなどによって心身ともに病んでしまう可能性があります。
そこで今回は、ブラック企業の求人を見分けるために注意すべき10個の内容を紹介します。これらの内容が求人票や面接で出てきたら要注意です。また、それぞれの内容がなぜ危険なのかも解説します。
目次
ブラック企業とは
ブラック企業とは、労働者の権利や健康を無視して、過重な労働や不当な扱いを強いる企業のことです。ブラック企業には以下のような特徴があります。
- 残業が多く残業代が支払われない
- 年間休日数が少なく有給休暇や代休が取れない
- パワハラやモラハラがある
- ペナルティが常識では考えられない内容
- 一方的に給与を減額される
ブラック企業は、社員の精神的・肉体的・経済的に大きなダメージを与えます。過労死や自殺、うつ病や心身症、貧困や借金など、様々なリスクがあります。
ブラック企業に入ってしまうと、以下のようなリスクがあります。
- 退職する際に退職金が支払われない、退職届けが受理されない、引き止められる、嫌がらせされるなどのトラブルが起こる可能性が高い
- 転職する際に履歴書に書ける実績やスキルが少なく、希望する条件で就職先を見つけることが難しくなる可能性が高い
- 長時間労働やストレスで体調を崩し、病気にかかったり命を落としたりする可能性が高い
ブラック企業は自社の悪評を隠すために求人情報でウソやごまかしをすることもあります。しかし、求人情報からもブラック企業の兆候は見つけられます。求人情報はブラック企業への入り口ですから、注意深くチェックすることでブラック企業へ転職しないための第一歩と言えます。
このような会社は自分や家族の健康や幸せを奪ってしまいます。就職・転職時には注意が必要です。
ブラック企業が増えている理由
ブラック企業が増えている理由を5つ挙げてみます。
- 人件費削減のため
- 少子高齢化のため
- グローバル化のため
- 産業構造の変化のため
- 転職意識の低さのため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
不景気やコロナ禍などで経営環境が厳しくなった多くの企業は、利益確保のために人件費削減に走りました。その結果、
- 社員数を減らす
- 給与や賞与をカットする
- 残業代を払わない
などの措置を取りました。これらはすべて労働者に不利益な待遇であり、ブラック化する要因です。
日本では少子高齢化が進んでおり、
- 就労者数が減少する
- 年金や医療費等の社会保障負担が増加する
ことによって国家財政や経済活動に影響します。その結果、
- 国から健康保険料等の負担増を求められる
- 市場規模や需要が縮小する
ことによって多くの企業は収益力低下や競争激化に直面します。これも人件費削減や長時間労働等のブラック化する要因です。
参考までに財務省が公表している「国民負担率の推移」をご覧ください。社会保障の負担率が年々増えており、企業の社会保障費(社会保険料は労働者と折半)の負担額も増えています。
世界的なグローバル化によって、
- 海外から安価で優良な商品やサービスが流入する
- 海外に進出した日本企業が国内の採用を減らす
ことによって国内の企業は市場シェアや人材確保に苦戦します。これも収益力低下や競争激化につながり、ブラック化する要因です。
ITやAIなどの技術革新によって、
- 新しい産業やビジネスモデルが生まれる
- 古い産業やビジネスモデルが淘汰される
ことによって産業構造は大きく変化します。その結果、
- 新しい分野で活躍できる人材が不足する
- 古い分野で働く人材が余剰になる
ことによって多くの企業は人材確保や配置転換に課題を抱えます。これも労働条件悪化や長時間労働等のブラック化する要因です。
日本では転職意識が低く、
- 入社した会社を辞めることは「悪いこと」と認識される
- 転職先が見つからないかもしれないという不安がある
ことによって多くの労働者はブラック企業から抜け出すことができません。その結果、
- ブラック企業は労働者を囲い込むことができる
- ブラック企業は改善する必要性を感じない
ことによってブラック企業は存続し、増加してしまいます。
ブラック企業の見抜き方|求人情報からチェックすべき10のポイント
この記事では、求人情報からチェックすべき10のポイントを紹介します。
同業他社と比べて給与が高すぎる場合や、金額の幅が大きすぎる場合は要注意です。
ブラック企業は高い給料を謳っている代わりに、長時間労働や過剰なノルマが常態化していることが多いです。
また、本当に給料が高いわけではなく、高いノルマを達成した場合のみ高給になる、みなし残業手当が含まれているといった可能性もあります。
求人情報だけで判断せずに、同業他社の平均年収や残業時間なども調べて比較しましょう。
「若手が活躍できる」「熱意のある職場」といった聞こえの良い言葉が並んでいる求人情報は要注意です。
ブラック企業では実際の仕事内容や労働環境を明かすと応募者が減ってしまうため、聞こえの良い言葉でごまかす傾向があります。
また、「学歴不問」「職歴不問」という言葉も危険信号です。ブラック企業ではすぐに人材が流出するため、能力や経験よりも頭数重視で採用することが多いからです。
仕事内容や必要スキルなど具体的な記述に目を向けましょう。
残業代や賞与・昇給等の記述が曖昧だったり、「応相談」「面接時説明」という表現だったりする場合は要注意です。
ブラック企業では残業代不払いや賞与カット・凍結など賃金面で不利益な待遇を強制することもあります。そのため、労働条件を明示しないようにしています 。
残業代や賞与・昇給等は労働者の権利であり、企業が自由に決められるものではありません。求人情報で具体的な金額や計算方法が記載されているかどうかを確認しましょう。
人材募集量が多い場合は要注意です。ブラック企業では離職率が高く、常に人手不足に陥っています。
そのため、大量採用や随時採用を行っていることが多いです 。
また、同じ求人広告が長期間掲載されている場合も危険信号です。応募者が少ないか、入社した人がすぐに辞めてしまっている可能性があります。
求人情報の掲載期間や更新日時にも目を向けましょう。
「年収1,000万円以上可能」「未経験でも月収50万円スタート」「入社祝金10万円支給」など、広告内容が派手だったり過剰だったりする場合は要注意です。
ブラック企業は応募者を増やすために誇大広告や虚偽広告を行っていることが多く、実際の待遇とはかけ離れています 。
また、「急募」「即日入社可」「面接保証」などの言葉も危険信号です。ブラック企業では人材流出が激しく、早く入社してほしいという焦りからこのような言葉を使っています。
広告内容に惑わされずに、実際の仕事内容や労働条件を確認しましょう。
面接回数や時間・内容もブラック企業の見抜きポイントです。ブラック企業では以下のような特徴があります 。
- 面接回数:1回だけで内定出す場合や逆に何度も面接させられる場合
- 面接時間:数分で終わったり逆に長時間引き延ばされたりする場合
- 面接内容:雑談ばかりだったり逆に厳しく詰問されたりする場合
ブラック企業では面接で能力や適性を見ることよりも頭数確保や精神的圧迫を目的としています。そのため、面接プロセスが不自然だったり不快だったりすることが多いです。
面接時には自分の希望条件や疑問点を積極的に質問しましょう。
面接時に社内の雰囲気や従業員の様子もチェックしましょう。ブラック企業では以下のような特徴があります 。
- 社内の雰囲気:静かすぎたりうるさすぎたりする場合
- 従業員の様子:疲れ切っていたり不機嫌そうだったりする場合
- 社員の年齢層:若手ばかりだったり逆に高齢者ばかりだったりする場合
ブラック企業では社内のコミュニケーションや人間関係が希薄で、従業員のモチベーションや満足度が低いことが多いです。また、離職率が高く、中堅層やベテラン層が不足していることもあります。
面接時には社内を観察し、自分が働きやすい環境かどうかを判断しましょう。
面接官の態度や質問内容もブラック企業の見抜きポイントです。ブラック企業では以下のような特徴があります 。
- 面接官の態度:威圧的だったり無関心だったりする場合
- 質問内容:プライバシーや人格を侵害するような質問をしたり、自社を批判するような質問をしたりする場合
ブラック企業では面接官にコンプライアンス意識やマナーが欠けていることが多く、応募者に対して不適切な言動をとることもあります。また、自社に対する忠誠心や服従心を試すような質問をしたり、応募者の意思決定能力や自己主張力を奪おうとしたりすることもあります。
面接時には自分の価値観や考え方をしっかり持ち、不快な言動には断固として反論しましょう。
労働条件や契約書・就業規則もブラック企業の見抜きポイントです。ブラック企業では以下のような特徴があります 。
- 労働条件:労働時間・休日・給与等が明示されていない場合
- 契約書:内容が求人情報と異なっていたり、署名捺印させられる前に説明されなかったりする場合
- 就業規則:存在しなかったり閲覧できなかったりする場合
ブラック企業では労働条件や契約書・就業規則で労働者に不利益な取引を強要したり、法令違反したりすることもあります。そのため、入社前にこれらの内容を確認しましょう。
労働条件や契約書・就業規則は労働者の権利であり、確認しないで署名捺印させられることはありません。不明点や疑問点は必ず質問しましょう。
口コミや評判もブラック企業の見抜きポイントです。ブラック企業では以下のような特徴があります 。
- 口コミ:悪い口コミが多かったり、逆に良すぎる口コミが多かったりする場合
- 評判:業界内での評判が悪かったり、社会的な問題を起こしていたりする場合
ブラック企業では労働者からの不満や苦情が多く、口コミサイトやSNSなどで悪い評価を受けることが多いです。また、自社のイメージアップのために良い口コミを自作自演したり、外部に漏らさせないように圧力をかけたりすることもあります。
評判に関しては、業界内での知名度や信頼度を調べたり、過去に法令違反や不祥事などがなかったか確認したりしましょう。
ブラック企業から脱出する方法|対処法と退職方法
もし自分がブラック企業に入ってしまった場合は、早めに脱出することを考えましょう。ブラック企業で長く働くことは、肉体的・精神的・経済的・キャリア的なダメージを与えます。 ブラック企業から脱出する方法としては以下のようなものがあります。
- 労働基準法違反やハラスメント行為を証拠として記録する。
- 労働基準監督署や労働相談窓口、弁護士など専門家に相談する。
- 会社側と交渉して改善要求や残業代・賃金未払い請求などを行う。
- 退職代行サービスや弁護士事務所など第三者機関に依頼して退職手続きを行う。
- 転職エージェントやキャリアコンサルタントなどプロフェッショナルに相談して次の就職先を探す。
これらの方法は一つだけではなく、組み合わせて使うことで効果的です。自分一人で悩まず、周囲の支援を受けて早期解決を目指しましょう。
まとめ
この記事では、ブラック企業を見抜く方法と対処法について解説しました。 ブラック企業は、労働者の健康や幸せを奪うだけでなく、社会全体にも悪影響を及ぼします。 ブラック企業に入らないためには、求人情報からチェックすべき10のポイントを抑えることが大切です。
また、もしブラック企業に入ってしまった場合は、早めに脱出することを考えましょう。証拠の記録や専門家の相談、退職代行サービスや転職エージェントなどの利用が有効です。 ブラック企業は見抜く力と対処力で乗り越えることができます。自分の人生を守るためにも、ブラック企業に負けないようにしましょう。