長時間労働についてみなさんはどの程度ご存知でしょうか?
実はこれ知っているのと知らないのでは今後の生活に大きく差が出ます。
あなたは時間外労働をどれくらいしていますか?時間外労働とは、一般的に「1日8時間、週40時間」を超えて働くことを指します。しかし、この基準はあくまで目安であり、実際には業種や職種、契約形態などによって異なります。また、残業や休日出勤だけでなく、通勤時間や休憩中の業務も労働時間に含まれる場合があります。 そこで、この記事では、自分が長時間労働に該当しているかどうかチェックする方法を紹介します。まずは、以下の質問に答えてみてください。
- 所定労働時間は何時間ですか?
- 平均残業時間は何時間ですか?
- 始業前や休憩中に業務を行うことはありますか?
- 休日出勤や持ち帰り仕事の頻度はどれくらいですか?
これらの質問に答えたら、自分の実質的な労働時間を計算してみましょう。所定労働時間(8時間)と平均残業時間を足し合わせて月間労働時間を求めます。次に休憩中の業務時間を足し合わせて月間通勤・休憩中業務時間を求めます。最後に、休日出勤や持ち帰り仕事の回数とその平均所要時間を掛け合わせて月間休日出勤・持ち帰り仕事時間を求めます。 これら3つの値を足し合わせると、自分の実質的な月間労働時間が分かります。この残業時間には上限が定められており、超えると違法になります。
自分の身を守るためにも正しい知識を身につけ、長時間労働やサービス残業に対して対抗手段を持ちましょう。
目次
時間外労働の定義
原則として、労働者は1日の労働時間の上限は8時間と決まっています。
これを労働者の代表との間で協定を結び、労働基準監督署に届け出ることによって勤務時間の上限を伸ばすことができます。これが時間外労働、いわゆる残業です。
この労使間の協定が通称36協定(サブロク協定)です。36協定が結ばれていないと残業をさせることができません(労働基準法36条)。
また、月間の残業時間上限についても次の通り定められています。
月
45時間
年間
360時間
ちなみにこれは通常月の残業時間であり、特別条項というものも存在します。
その場合には通常の残業時間の上限が次のように引き上げられます。
2~6月平均
80 時間
1ヶ月最大
45 ▶︎ 100 時間未満
年間
360 ▶︎ 720時間
最長でも80時間を超える月は6回までという上限が設けられているだけでなく、100時間以上の残業は1回も許されていません。
そのため、毎月の管理者は残業時間管理をしなければなりませんが…。
勘の良い方はお気づきですね?
管理職は「管理監督者ではない」ということに。
社内で勝手に管理監督者扱いされている「管理職」の方ですが、この36協定の対象となります。
もっとも、精神疾患等の障害がない限りは損害賠償請求をすることは難しいですが、労働基準監督署に訴えることによって、指導や罰則が入り、社内環境の改善につながるかもしれない。という点は覚えておいた方が良いでしょう。
そもそも残業とは?
細かい話をすれば、労働基準法第36条(通称サブロク協定)を結べば従業員に対して時間外労働をさせる事ができるのですが、その上限が決まっていると言う事です。
これは元々「繁忙期がある職場では残業しないと業務が終わらない!」という実情に対して設けられた法律ですが、いつしか残業をさせても良い、と社会的に解釈されるようになりました。
残業という言葉が一人歩きしているため、どうしても「就業時間後」というイメージがつきがちな「時間外労働」ですが、その言葉通り、「始業時間前」や「休憩時間中の労働時間」も1分単位で時間外手当を支給しなければなりません。
多くの企業では、始業前や休憩時間を時間外労働として記録させないだけでなく、終業後の労働についても上限を設けている(タイムカードを先に押させるなど)という事業所が多く存在します。
ですが、周りがやっているからいいのではなく明確に「違法」であるということを認識してください。
自分の身を守るためには、タイムカードとは別に就業時間のメモを毎日取る習慣をつけましょう。
また、時間外手当を請求するかどうかは本人の意思ですが、請求した人を責める資格はありません。「あなたも同じ権利を持っているのに自分で権利を行使しないことを選んでいる」からです。
選ぶのは本人の自由なのですから、責めるのはおかしいですよね?
不満なら自分も請求すればいいだけなのですから。
そんな残業時間ですが、流石に上限が設けられています。
ただし、ここでの上限は一般従業員と管理監督者では異なることに注意してください。
なお、管理監督者の定義については以下の通りです。
- 部門等を統括する立場である
- 会社経営に関与している
- 労働時間や休憩は自由であり、労働基準法の規定が適用されない
- 給与面で他の従業員より優遇されている
別の記事で詳しい情報を記載しているのでリンク先をご覧ください。
さて、長時間労働の定義ですが、以下の通りとなります。
原則として以下の条件は守らなくてはなりません。
月45 時間
年間360 時間
(労働基準法36条4項)
察しの良い方はお気づきの通り、上記は原則であって上限ではありません。
実はもっと細かい決まりがあり、残業を多くさせる事ができるのです。
(この点は業務上の都合や業界の繁忙期があるので画一的にはできないと言う事情があります)
では、具体的な上限についてはどう言う条件なのかと言うと次の通りです。
時間外労働は
年間720 時間以内
時間外労働及び休日労働の合計
複数月(2〜6ヶ月)
平均で80 時間以内
時間外労働及び休日労働の合計
1ヶ月あたり100 時間未満
原則1ヶ月あたりの上限
45 時間を超えられるのは
1年で6ヶ月以内
いかがでしょうか?
「こんなのあっさり超えてるよ!」と言う方も多いのではないでしょうか。
実はこの基準になったのは最近のため、知らない方も多いかもしれません。
ですがこれはれっきとした基準であり、労働災害としての審査内容にも上記の基準が守られているかが審査されます。
よく「100時間くらい軽く超えて残業しているよ!」と言う声を聞きますが、違法です。
また、年間の上限回数も制限があり、平均値も計算しなければならないため、管理する側はかなり気をつかいます。
管理監督者とは?
そして、これにはポイントがもう一つあります。
それは「管理監督者には適用されない」と言う点です。
なぜなら、管理監督者には時間の自由があるため、自分の体調は自分でコントロールできる立場にあるからです。
ここでも勘の良い方ならお気づきでしょう。
そうです。ほぼ全ての「管理職」とよばれる人は「管理監督者」ではないのです。
もし、この「管理職」の方が、労働基準監督署に訴え出る。もしくは、長時間労働による身体的・精神的な疾患を患った場合、労災として認定される可能性が高いです。
その場合は、労働基準監督署の調査が入り、従来支払うべき残業代についても支払い義務が課されるため、会社としては大きな痛手となります。
そして会社側はそのことを十分にわかっています。そのため、なんらかの手で労災申請や労働基準監督署への訴えを取りやめるように講じてくるでしょう。
在職中の方が特に勧められるのは「傷病手当金」です。
基本的な考え方を整理すると次の通りです
- 業務上の原因でないケガや病気
|傷病手当金 - 業務が原因のケガや病気
|労働災害(労災)
労災は労働基準監督署への申請が必要です。
申請に基づいて労働基準監督署が調査を行い、業務上の原因と認められた場合は労災認定されます。
ですが労災が認定されなくても傷病手当金は継続して受給できますので、労災申請自体は行うことを勧めます。
労災補償と傷病手当金は補償が段違いです。
労災認定のハードルは高いですが、申請するだけの価値があります。
下記をご覧いただくと分かると思いますが、労災補償の場合は給与の80%に加え、医療費にいたっては完治(寛解)まで完全に無料です。
傷病手当金は1年6ヶ月(通算)という期限がありますが、労災補償は完治まで受給を継続できます。
さらに労災の場合は給与の40%を休業損害として会社に損害賠償請求することができます。
つまり労災補償は最大で給与の120%もらうことができるのです。
この違いを理解しておく必要がありますので、必ず覚えておくことをお勧めします。
傷病手当金| 労災補償
補償額|給与の割合
3分の2 ▶︎ 80 %
医療費
3割負担▶︎ なし
期限
1年6ヶ月▶︎ 無期限
※厳密には単純な給与ではありませんが
ここでは簡易的に給与とします。
※傷病手当金の期限は通算で1年6ヶ月です。
ちなみにですが、時間外労働の上限規制に違反した場合には、経営陣に対して6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されます(労働基準法第119条)。
そして、もっとも会社として一番恐れるのは、違反があった際ことを公表されることです。
資金調達や人材の確保など、会社の評判が変化することによって大きく経営に影響を与えます。そのため会社は労災申請を嫌がるのです。
ただし、労災隠しもまた立派な犯罪ですので、労働者は堂々と労災申請をするべきなのです。
参考までに労働基準違反があった場合は労働局より企業名が公表されていますのでご覧ください。
【外部リンク】東京労働局(労働基準関係法令違反に係る公表事案)
長時間労働が発生する原因とリスク
長時間労働をしている人は、なぜそうなってしまうのでしょうか?一般的に、以下のような原因が挙げられます。
- 人手不足:業務量に対して人員が不足しているため、残業や休日出勤が増える。
- 非効率な働き方:業務の優先順位や目標が明確でないため、無駄な作業や打ち合わせが多くなる。また、自分の仕事を他人に任せられないため、負担が大きくなる。
- 働く意識や文化:自分の仕事に責任感や使命感を持ちすぎて、休むことに罪悪感を感じる。また、周囲の人や上司からの評価や圧力に影響されて、長時間働くことを当然と考える。
これらの原因は、個人だけでなく組織全体に関わる問題です。長時間労働は、健康や生活に様々なリスクをもたらします。具体的には、以下のようなリスクがあります。
- 健康面:過労死や過労症だけでなく、心臓病や脳卒中、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、うつ病や不安障害などの精神的ストレスによる疾患などが発生する可能性が高まる。
- 生活面:家族や友人とのコミュニケーションや趣味・娯楽・睡眠・食事・運動などの自己管理がおろそかになり、生活の質が低下する。また、結婚や出産・育児・介護などのライフイベントにも影響を与える。
- 社会面:長時間労働は社会保障制度や税制度にも負担をかける。例えば、医療費や年金・保険料の増加や減少、所得税・消費税等の収入源と支出先とのバランスの乱れ等が起こり得る。
以上から分かるように、長時間労働は自分だけでなく社会全体の問題です。では、長時間労働を解消するためにはどうすればいいでしょうか?次の章では、長時間労働を解消するための方法を紹介します。
長時間労働を解消するための方法
長時間労働を解消するためには、個人と組織の両方で取り組む必要があります。ここでは、具体的な方法をいくつか紹介します。
- 業務の優先順位や目標を明確にする。自分の仕事の重要度や緊急度を把握し、効率的に進める。
- 残業や休日出勤を減らす。必要な場合は事前に上司や同僚に相談し、承認や代替案を得る。
- 休憩中や通勤中は業務を行わない。メールや電話などの連絡手段もオフにする。
- 自己管理をする。睡眠・食事・運動・趣味などの生活リズムを整える。ストレスチェックや健康診断なども利用する。
- 家族や友人とコミュニケーションをとる。仕事以外の話題で気分転換したり、相談したり、支え合ったりする。
- 労働時間管理制度を整備する。残業時間上限や休日出勤規制などのルールを設定し、徹底させる。
- 業務改善プロジェクトを実施する。業務プロセスやツールの見直し、無駄な作業や打ち合わせの削減、業務委託や外部協力者の活用などで効率化を図る。
- ワークライフバランス推進策を導入する。フレックスタイム制やテレワーク制などの柔軟な働き方、有給休暇取得促進策や福利厚生制度などの休息支援策、育児・介護支援策などのライフイベント対応策等を提供する。
- 働く意識や文化を変える。長時間労働が良いという風潮から脱却し、成果主義や多様性尊重といった新しい価値観に基づく評価制度や風土づくりに取り組む。
まとめ
身に覚えのある方も多いと思いますが、もしもの時のために、勤務表のコピーや勤務時間・休憩時間のメモは必ず取っておきましょう(職場によっては荷物の持ち込みや持ち出しが禁止されているところもあるので帰ってからメモをとっておきましょう。メモは重要な証拠品となります)。
毎日の日課として、出退勤のメモと休憩時間の労働時間を1分単位でメモを取ること。
会社によっては10分単位や5分単位で入力する会社もあると思いますが、調査の際には正確な情報が必要となります。
そのため、完全に一致していなくても1分単位でメモを残すことが重要です。
すでにメモをとっている方は時効になる3年に気をつけ、残業代請求の時期を伺いましょう。
データがない、もしくはメモもない場合は今日から1分単位でメモを取ることを日課にしましょう。
証拠がないと泣き寝入りしなければならなくなってしまう可能性が高くなるので、これまでの苦労が無駄になってしまいます。
また、残業代請求とは直接関係はありませんが、上司からの業務指示についても必ずメールやメモなどの記録を残しておきましょう。
ハラスメント対策にもなりますし、管理職の方にとっても重要な証拠となります。
最後に自分を守れるのは自分自身だという意識を常に持っておきましょう。
残業代請求・労災申請の際の決め手となる重要な証拠となるだけでなく、ご自身を守り、周りの大事な人を守ることにつながりますので、自分は関係ないと思わずに準備はしっかりしておくことをオススメします。
周囲や前任者で倒れた人がいた場合や、激務の人を見てみると良いでしょう。
今見ている姿は未来のあなたの姿かもしれないのですから。
以上、今回の記事が皆さんのお役に立てば幸いです。
それでは