今回はうつ病になった時に性欲はどうなるのかについてお話しします。
性欲は人間の3大欲求の1つであり、健康や幸福感にも大きく関わる重要な要素です。しかし、うつ病になると性欲が低下することはよくあることで、私もその一人でした。
性欲が低下する原因は、うつ病そのものや抗うつ剤の副作用などが考えられます。性欲低下はパートナーとの関係に影響するだけでなく、自己肯定感や生きがいにも関わる重要な問題です。
そこで、私が実際に試したり調べたりしたことをもとに、うつ病で性欲が落ちたらどうすればいいか、原因と6つの対策を紹介します。
※直接的な表現はできるだけ控えますが、苦手な方はご注意ください。
目次
うつ病と性欲低下の関係
うつ病になると、脳内物質のバランスが崩れ、性欲が低下することがあります。また、ストレスや薬の副作用によっても、性欲低下が引き起こされることがあります。このような状態に陥ると、性行為をすることが億劫になり、パートナーとの関係にも悪影響を与えることがあります。ハフポストの記事では女性視点での性生活について語られています。
また、医師が解説した記事においても、精神疾患による脳への影響と性欲減退やセックスレスについての関係が語られています。
私は男性なので、男性目線でのお話をします。
男性はご自分に置き換えて、女性の方はパートナーに置き換えて読んでみてください。
結論からお話しすると、完全に性欲は無くなります。
睡眠欲以外の欲求は全てなくなると言った方がいいです。
体や脳に刺激があると脳に熱がこもった感じになりオーバーヒートします。そのため性的な興奮に脳が耐えることができません。
特に射精まで興奮状態を高めるのは相当頭に負荷がかかるので、そこでブレーキがかかります。そしてしばらく頭が痛いままの状態になるので危険を感じます。
加えてそもそも勃起不全(ED)にもなるため、興奮状態になかなかなりません。
無理やり試すこともありましたが、陰茎が全く反応しないのでどうしようもありません。
健康な人なら何もしなければ自然に性欲は湧いてくるものですが、全くそんなことはなくなり、意識しなければ忘れてしまうほどでした。
厚生労働省のウェブサイト「みんなのメンタルヘルス」においても、うつ病と性欲低下の関係性が示されています。
長く付き合っていかなければならないうつ病ですが、パートナーがいる方は相互理解が重要な要素になると思います。
男性の場合は精神的な状態や体調で興奮状態が大きく変化するので、女性の方は全て自分が原因と思うのではなく、相手の疲労や精神状態に意識を向けてください。
それでは改めて、性欲についてどうなるのかをみていきましょう。
うつ病になると性欲はどうなるのか
まず、他の欲求と同じく全くなくなると思ってください。
そもそも湧き上がらないというのもそうなのですが、性的興奮に対して脳が耐えられないと言った方が正しいです。
私はパートナーがいなかったので、自分一人で完結できるのですが、うつ病になってから数ヶ月経ち、食事や睡眠が取れるようになってようやく意欲が湧いてきます。
しかし、いざ自慰行為をしようと思った時、脳が興奮状態になった時、強烈な頭痛が脳を襲います。
車で言えばサイドブレーキを引いたままアクセルを踏むようなもので、脳に大きな負担がかかります。
そして勃起不全(いわゆるED)の状態になります。
興奮に近い状態にはなりますが、陰茎が反応しないという状態です。
全く反応しません。感覚はありますが、血が巡らないという感じでしょうか。
そんな状態がしばらく続きます。
もう少しマシな状態になると、少し勃起状態が戻ってきます。
ですが、自慰行為になると最後までできません。
射精は脳に強烈な負担がかかるため、ブレーキがかかり絶頂状態にいけないのです。
無理に続行しようとすると頭痛がひどくなるため、そこまででストップです。
この時点では性欲自体が衰えているため、仮に射精できなくても欲求不満ということにはならないのですが…。
ただ、性欲を維持するためには、ある程度継続的に発散しなければ衰えがひどくなるため、定期的に試すようにはしていました。
結局射精ができるようになるまでには、うつ病の治療を始めてから1年以上経ってからです。
それでも相変わらず脳への負担が大きく、体力の消耗が激しい状態が続きました。
ある程度性欲が戻り、自慰行為までしたいと思うまではさらに半年くらいを要しました。
最初に述べた通り、私にはパートナーがいなかったのでまだマシだったかもしれません。
パートナーがいる方は日常生活もそうですが、性生活に関しても相手の理解を得るのが難しいかもしれません。
ですが、お互いの理解があって初めて乗り越えられると思いますので、普段からの会話が重要になると思います。
この辺りの話については、女性側は男性側、男性は女性側の性機能障害についての理解も必要だと思います。
性欲低下の原因を知ろう
まずは、自分の性欲が低下している理由を知ることが大切です。それによって対処法も変わってきます。
主に以下の原因が考えられます。
- うつ病そのもの: うつ病では脳内物質のバランスが崩れてしまいます。その中でもセロトニンやドーパミンなどは性欲を司る神経伝達物質です。これらが減少すると、気分や興味・関心・喜び・快楽などが低下し、性的な刺激に対して反応しづらくなります。
- 抗うつ剤: 私はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という種類の抗うつ剤を服用しています。この薬はセロトニン2受容体を刺激してしまい、それが性欲や性機能(勃起力や射精力・オルガスム)を抑制する可能性があります。実際に私も服用後から性欲が減退したり、オルガスムに達しにくくなったりしました。他の種類の抗うつ剤でも性欲低下の副作用は報告されています※うつ病になると性欲って落ちちゃうんです。
- その他: 性欲低下の原因としては、ストレスや疲労・睡眠不足・ホルモンバランスの乱れ・自己イメージの低下・パートナーとのコミュニケーション不足なども考えられます。これらはうつ病によっても引き起こされることがあります。
落ちた性欲は元に戻るのか
抗うつ薬は、脳内物質のバランスを整えることで、うつ病の症状を緩和する効果があります。ただし、副作用として性欲低下が起こることがあるため、医師と相談して適切な薬の種類や量を決める必要があります。
一般論にはなりますが、ライフスタイル改善も、うつ病による性欲低下を改善するために重要な要素です。規則的な生活リズムや運動、バランスの良い食事などを心がけることで、ストレスを軽減することができます。さらに、日常的なコミュニケーションを大切にし、ストレスを感じたら上手にリラックスする方法を見つけることも大切です。
私の場合は、治療を始めて2年以上経っていますが、まだ元通りというわけにはいきません。
それでもだいぶ元気な状態に近くなっていますので、だいたい発症から約2年というのが回復期間の目安といえるのではないでしょうか。
一人で苦しまれている方は私のような例を参考にしていただき、パートナーがいる方はお互いに話し合い徐々に従来の性生活に戻していくというのが良いと思います。
いずれにしても、時間はかかりますが性欲は戻ります。
うつ病の食欲、睡眠欲もそうですが、元に戻そうとすると必要以上に焦ってしまうものです。うつ病で何もできなくなった状態の時からどのように前進したかを考えて行動していくことが、うつ病と向き合い、長く付き合っていくコツだと思います。
参考|精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル
参考|メンタルドクターSidow
性欲低下を改善する6つの対策
次に、性欲低下を改善するために私が試したり調べたりした対策を紹介します。これらはあくまで個人的な経験や情報ですので、必ず医師やカウンセラーなど専門家と相談してください。
抗うつ剤が性欲低下の原因である場合は、医師と相談して薬の種類や量・服用時間を変更したり調整したりすることが有効です 。SSRIからSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などの副作用についてよく確認をしてライフスタイルに併せて調整していくのが良いでしょう。
サプリメントや漢方薬なども性欲を高める効果が期待できる場合があります 。マカなどのサプリメントもあります。これらは男女問わずテストステロン(男性ホルモン)を増加させる作用があると言われています 。実際に私も気分が高揚したり体力が増したりする感じがしました。
セックスだけではなく、キスや抱擁・マッサージなどセックス以外の愛情表現も重要です 。これらはパートナーとの親密さや信頼感を高めるだけでなく、オキシトシン(愛情ホルモン)やエンドルフィン(快楽物質)などを分泌させて気分を良くします 。パートナーと手を繋いだり抱き合ったりすることで安心感や幸福感を得ることができます。
性欲低下に罪悪感や焦りを感じることはありません。自分へのご褒美や優しさで自信を取り戻しましょう 。私は好きな音楽を聴いたり美味しいものを食べたり自分磨きをしたりすることで気持ちをリフレッシュしました。また、自分の体や性に対して否定的な考えを持たないようにしました。自分の体を愛おしく思うことで、性への興味も高まります。
ストレスや疲労・睡眠不足などは性欲に悪影響を及ぼします。セルフケアやリラクゼーションで心身のバランスを整えましょう 。私は適度な運動や睡眠・栄養・水分摂取などで体調を整えました。また、瞑想やヨガ・アロマテラピーなどでリラックスすることも良いそうです。これらはストレスホルモン(コルチゾール)を減らしてセロトニンやドーパミンなどを増やします。
パートナーとのコミュニケーションは性欲低下に対処する上で最も重要です 。パートナーに自分の気持ちや状況を正直に伝えましょう 。パートナーにうつ病や抗うつ剤のこと、性欲が低下していること、それでも愛していることなどを話し合うことで。パートナーの理解を得ることができ、一緒に解決策を探してくれるかもしれません。
まとめ
3大欲求の中では軽視(タブー視)されがちだと思いますが、性欲は重要な欲求です。
性生活だけでなく異性に興味がなくなること自体、将来的なパートナー探しの弊害にもなるからです。
日常生活の復帰がなければ何も始まりませんが、あまり性欲について言及している記事を見かけなかったので書くことにしました。
恋愛関係や結婚生活も性欲がなければお互い辛い思いをすることになると思います。
そのため少しでもこの記事が理解の役に立てば良いと思っています。
男性の場合は自分自身がうつ病になった時のために、女性はパートナーが苦しんでいる時の理解が進むようになれば幸いです。
日常のストレスや疲労で男性の性欲は大きく変化します。
うつ病による性欲低下や勃起不全は、パートナーとの関係に悪影響を与えることがあります。
特に長時間労働や、職場環境が劣悪などストレスがかかる環境にいる場合には性欲にも影響してきますので、自分自身やパートナーの変化にも目を向けられるようにしましょう。
以上、今回はデリケートな部分についてのお話でしたが、皆さんの参考になりましたら幸いです。
それでは
参考文献:眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話: 自律神経のギモンを専門医がすべて解説! (小林弘幸著)、『脳内物質仕事術』(樺沢紫苑著)