残業代請求への心理的なハードルとその原因
あなたは、残業代がきちんと支払われているでしょうか?もし、残業代が不足していると感じているのに、請求することに抵抗を感じているのであれば、あなたは決して一人ではありません。
実際に、日本では多くの労働者が未払い残業代を放置しています。その理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 会社や上司に嫌われる
- 仕事や昇進に影響が出る
- 周囲から白い目で見られる
- 方法や手続きが分からない
- 証拠や資料が揃っていない
実際多くの人がサービス残業をしていながら残業代請求をせずに我慢して働き続けている人が多いです。連合(日本労働組合総連合会)の「労働時間に関する調査」によると42.6%の人はサービス残業をせざるを得ないとの回答があります。心理的のハードルの高さがこのデータにつながっているのだと考えられます。
これらの心理的なハードルは、あなたが正当な報酬を得ることを阻んでいます。しかし、これらのハードルは本当に正しいものでしょうか?次に見ていきましょう。
目次
未払い残業代はあなたへの借金
残業代請求については分かっていても実際に行うには心理的なハードルを越えなければなりません。
それに関しては考え方を変える必要があると思っています。未払い残業代は「請求できる権利」ではなく、会社が支払う「義務」であることを理解しなければなりません。
残業代請求にためらいがある方は、下記のように考え方を変えてみましょう。
❌ 労働者の権利
▶︎ ⭕️ 経営者の義務
❌ 未払い残業代
▶︎ ⭕️ 従業員に対する借金
残業代請求自体は労働者が自分で行わなければなりませんが、本来は
「経営者の義務」です。
労働の対価として賃金を払うことは法律でも定められているわけですから、企業独自の制度(管理職や年俸制などの給与制度)により給与を払わないのは違法です。はっきり言えば犯罪行為です。
また、残業代の未払いは「払うべきお金を払っていない」わけですから、「居酒屋のツケ」と同じです。ですが、ツケなんかとは比べ物にならないほど巨額です。言い換えれば、会社にお金を貸しているのと同じなのです。
数百万円の借金を踏み倒されることをあなたは納得できますか?
おそらくできないでしょう。
それだけでなく、その相手との信頼関係は崩れ、泣き寝入りをせずに訴訟を起こすはずです。
でも相手が企業の場合にはそう思わないのはおかしいと思いませんか?
残業代請求という言葉が「誤解」を与えているのであって、正確には会社から「借金を返済してもらう」のです。
参考までに未払い残業代に対する
利息を記載しておきます。
在職中
|3 %
退職後
|14.6 %
※いずれも年率
このことを踏まえて、残業代について考えてみたいと思います。
残業代とは何か?
残業代とは、時間外労働に対して支払われる賃金のことです。法律では、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えた場合には、割増賃金(通常の賃金よりも高い賃金)を支払うことが義務付けられています。割増率は、時間外労働では25%以上、休日労働では35%以上です労働基準法第36条。
単純にいうと「会社が決めた勤務時間よりも長く働いたら、その分だけお給料が上がる」ということです。例えば、会社が決めた勤務時間が9時から18時までであれば、それ以降に働いたら残業代が発生します。また、会社の定めた休日に出勤した場合も残業代が発生します。
実際、法律的には理解できていても上司や同僚などの人間関係や、会社からの報復を気にして行動しない人も多いと思います。もしどうしても気が引けるのであれば「匿名」で労働基準監督署に通報するという手段もあります。この場合、通報者の秘密は守られますし、会社に調査が入ることによって改善される可能性はあります。
一方で、匿名で通報した場合、調査に入ったとしても違法労働をしている人の情報を集中して調査することができないため、是正勧告までつながらず、会社側の緊張感だけを高めてしまう危険性があります。
以上のように、法的には違反であることは理解できていたとしても、今後も同じ会社で働き続けることを考えると、波風を立てずに働き続ける方が無難と考える人がほとんどなのが実態なのだと言えます。
あなたが本当に大切にしていること
でもみなさん。考え方を少し変えてみませんか?
みなさんの人生の中での優先順位はなんでしょう?
会社?家族?自分の将来?友人?いろいろあるとおもいます。
そのなかで、今働いている会社が最も重要で、一生添い遂げたい!と言う人はどれくらいいるのでしょうか?
そして、残念ながら一つの真実があります。それは、
あなたが会社をどれだけ大切に考えていたとしても、会社はあなたの将来に対して責任を持つことはできません。
ということです。
実際に私が長時間労働の末にうつ病で倒れたあと会社を去ることになりましたが、会社はその後の人生に対して責任を取ってはくれません。あくまでも会社にとって最優先は会社の今後であり、従業員は一定期間在籍する労働者でしかないのです。
ただ、これは会社が悪い!と言うことではなく、現実的に考えてそうなのだ。と言った方がいいかもしれません。
会社とあなたの関係は雇用契約で結ばれた、企業と従業員と言う関係であり、企業が優先すべきは株主価値の最大化、つまり業績を上げることなのです。
人材についての考え方は大きく分けて2つあります
- 付加価値を生み出す源泉
- 企業のコスト
この2つが企業にとっての人材、言い換えれば人件費が意味するところです。
そして、これが最も重要なのですが、従業員を本当に大切に思っているならば、サービス残業や名ばかり管理職など生まれるはずがないのです。
まともに給与を払ったら経営できない!その責任は経営陣にある
付加価値の源泉と考えるのだとしたら、人材に対してふさわしい報酬を払うはずです。
でも、真面目に残業代なんか払っていたら会社は立ち行かなくなる!会社が潰れたらどう責任取るんだ!
と言われるかもしれません。しかし、その責任を取るのは会社の経営陣です。
次に、会社や上司から「残業代を払ったら経営できなくなる」と言われたり圧力をかけられたりする場合があります。しかし、これは経営者側の問題であり労働者側に責任はありません。
経営者は事前に予算や人員計画等を立てて適切に管理しなければなりません。また、必要以上に長時間労働させること自体が過重労働や過労死等のリスクを高めます。そのような状況下で残業手当すら支払わないというのは、労働者の権利を侵害するだけでなく、経営者自身にとっても自滅的な行為です。
残業代を払わないことで経営が成り立っている会社は、本来は経営不振であり、その責任は経営者にあるのです。労働者が残業代を請求することは、会社に対して正しい指摘や改善要求をすることに他なりません。
そのために彼らは高い給与と責任を有しているのであり、支払ってなお組織を回すための仕組み作りをする事が彼らの仕事です。
上記のような発言をする人が現実にいますが、それができない時点で経営能力の無さを示しているにすぎません。
むしろ市場にとっては、残業代を払ったくらいで潰れるようなゾンビ企業は早々に倒産した方が市場の新陳代謝が早まるため、好循環を生むでしょう。
そのために、従業員としてやるべきことは、そんな会社にNO!を突きつけることなのです。
残業代請求や転職へ行動する方法
以上のように、残業代請求への心理的なハードルはすべて誤解や思い込みに基づくものです。あなたは自分の権利を主張し正当な報酬を得ることができます。そしてそのために必要な方法や手続きも簡単ではありませんが難しくもありません。
具体的には以下のようなステップがあります。
- 残業時間がわかる資料(勤務表・タイムカード・メール等)を揃える
- 残業代を計算する(時給×割増率×残業時間)
- 残業代支払依頼書(内容証明郵便)を作成し送付する
- 労働基準監督署へ申告する
- 労働審判申立書等を提出し裁判所へ提訴する
ただし、これらの手続きは一人で行うよりも専門家(弁護士・司法書士等)に相談した方が安心かつスムーズです。また、専門家費用や裁判費用等も未払い残業代から回収可能です。
まとめ
日本の多くの歴史ある会社で、不祥事が相次いでいるのも、経営者が新たなコンテンツやプロダクトを生み出すのではなく、あの手この手を使い「給料を払わずにコストを抑えよう」などの考えが根底にあることとは無関係とは言えないと思います。
この辺りの話を次の記事で詳しく紹介しているので読んでみてください。経営者には経営者のコミュニティがあり、そこで情報が共有されます。コストを抑えるための方策の情報交換もこういった場でなされるのです。
多くの人が、従業員としての正当な権利を主張し豊かな人生を歩んでいくこと、そして、そのことが企業の自浄作用につながっていくと考えています。
以上、今回の記事が皆さんのお役に立てば嬉しいです。
それでは