あなたは「名ばかり管理職」になっていませんか?名ばかり管理職とは、実質的には管理監督者ではない従業員を肩書きだけの「管理監督者」とした上で残業代を支払わないという違法行為です。このようなことが横行するのは、労働基準法で定められた時間外労働や休日労働について、管理監督者に対しては規制が適用されないからです。
目次
管理職は管理監督者ではない
名ばかり管理職になると、どんな問題が起こるでしょうか?まず、残業代や休日手当が支払われず、不当に低い賃金で長時間労働を強いられることがあります。また、管理職としての権限や裁量が与えられず、自分の仕事内容やスケジュールをコントロールできないこともあります。さらに、一般社員からも上司からも信頼されず、孤立したりストレスを感じたりすることもあります。
実際にサービス残業が横行することによって、役職が上がると残業時間が増えるという調査結果もあります。働き方改革で一般社員の残業時間を抑える一方で、残業代を払わない管理職へのしわ寄せがいっている事実が確認できます。
では、名ばかり管理職から逃れるためにはどうすれば良いのでしょうか?この記事では、以下の内容を紹介します。
- 名ばかり管理職かどうかを判断する方法
- 名ばかり管理職から逃れるための証拠集め
- 名ばかり管理職から逃れるための行動方法
これらの内容を参考にして、あなたも名ばかり管理職から脱出しましょう。
他の記事でも書きましたが、実をいうと私は、名ばかり管理職の件で労働基準監督署への訴えを起こしましたが、決め手に欠くという理由で指導なし(つまり残業代の回収ができなかった)という結果に終わっています。
重要な証拠書類となる上司のメール
上司からの指示メールは、自分が裁量権を持っていないことや、経営者と一体の立場にないことを示すものです。裁量労働をもつ管理監督者は、自分で業務内容や時間を決められるはずですが、上司から具体的な指示や命令を受けている場合は、裁量権が認められていないと言えます。また、経営者と一体の立場にある管理職は、会社の方針や戦略に関与したり、意見したりできるはずですが、上司から一方的に通達されたり、無視されたりする場合は、経営者と一体ではないと言えます。
調査官に質問されたことがあります。
「上司から業務指示を受けた記録ってありますか?例えばメールとか」
実はこの一言が大きなカギだったのです
管理監督者である条件の一つに、
「自らが裁量権を持ち業務を遂行できる」
というものがあります。
つまり、上司というものは存在せず、自らの判断、予算を持って業務を行うことができるため、そもそも業務指示というものは存在しないはずなのです。
私は完全にここを甘くみていました。
弁護士との打ち合わせでも聞かれました。
「証拠書類の中に上司からの業務指示があったことを示すものはありますか?」
ハッとしました。
既に退職していて、メールも確認できない状態だったので、こればっかりはどうしようもありませんでした。
そのため、普段から指示メールに関しては記録として残しておくことを習慣にしておきましょう。
指示メールを保管する際の注意
上司からの指示メールを保管する際には、以下の点に注意しましょう。
- 保存期間:名ばかり管理職であった期間中のすべてのメールを保存することが望ましいです。労働基準法では残業代請求権消滅時効(時効)が3年間です。つまり残業代請求権消滅時効(時効)内であれば遡って請求できます。
- 保存形式:メール本文だけでなく送信者・受信者・日付・件名も含めてスクリーンショットや印刷物で保存することがおすすめです。電子データだけでは改ざんされた可能性もあります。
- 保存方法:パソコンやスマホだけでなくUSBメモリやクラウドサービスなどでもバックアップしておくことが大切です。万一データが消失したり破損したりしないようにしましょう。
これらの方法で上司からの指示メールを保管しておくことで、名ばかり管理職から逃れるための証拠集めがスムーズに行えます。
必ずしも必須の証拠ではない
結果的にはこの証拠がなくても十分な材料が揃っていたので残業代を勝ち取ることができましたが、もし「上司からの指示メール」があったら、労働基準監督署の調査の段階で残業代を勝ち取れていたのではないか?という思いがあります。
ちなみにもし労働基準監督署の調査で解決していたら、弁護士費用がかからないため、その分回収金額が多くなります。もっとも、その場合は弁護士に依頼することがなかったので、このブログのネタも早々に尽きていたでしょうが(笑)
決定的な証拠としての価値はどうなるかはわかりませんが、この資料は特に在職中でなければ用意することができない貴重な資料です。
まだ退職されていない方は、「上司からの指示メール」は大切にとっておきましょう!
メール以外でも記録があればOK
証拠として「上司からのメール」と書いていますが、録音や手書きのメモも重要な証拠となりますので、セキュリティが厳しい職場によってはメールを転送したり、印刷物を持ち出すことができない場合でも、帰ってからメモは必ずとっておくようにしましょう!
証拠として残す際は(5W1H)の形で残しましょう。
- いつ(〜年〜月〜日〜時ごろ)
- どこで(職場のデスク、会議室などで)
- だれが(上司の〇〇から)
- なにを(〜するように指示された)
- どのように(断れない雰囲気だった、断る権限がなかったなど)
ここまで記録できていれば、証拠能力として高いものになります。
証拠は多ければ多い方が良いので、労働基準監督署や弁護士に渡せる資料は片っ端から集めておくくらいの感覚でいいと思います。
上司からの指示メール以外にも名ばかり管理職から逃れるための証拠集めが必要です。以下のようなものがあります。
- 労働時間管理表:実際に働いた時間や残業時間を記録したものです。会社側が提出しない場合は自分で作成しておきましょう。
- 業務内容報告書:自分が担当した業務や成果をまとめたものです 。管理職としての役割や責任がないことを示すことができます。
- 証人:同僚や部下など、自分の業務状況や上司からの指示を知っている人です 。証言や証明書を提供してもらうことができます。
これらの証拠を上司からの指示メールと併せて用意することで、名ばかり管理職から逃れるための強力な武器となります。
参考動画|弁護士 西川 暢春 – 弁護士法人 咲くやこの花法律事務所
まとめ
証拠品の優先順位としては
現物 > コピー > 記録メディア(録音など) > 手書きのメモ
上記の順番が証拠品としての強さと考えておけば良いでしょう。
職場環境によって保管できる情報に差があるので、ご自分の環境に合った証拠集めをしましょう。
メールをそのまま転送できるなら個人のアドレスに転送し(情報管理には注意です)、メールを印刷したものを資料として保管しておく、ボイスレコーダー等で記録できるものは記録する。といった順番です。
職場によってはスマホなどを持ち込みができない場所もあると思いますので、その場合は手書きのメモを残すようにしましょう。
手書きのメモでも重要な証拠となることは覚えておきましょう。
証拠として残す際は(5W1H)の形で残しましょう。
- いつ(〜年〜月〜日〜時ごろ)
- どこで(職場のデスク、会議室などで)
- だれが(上司の〇〇から)
- なにを(〜するように指示された)
- どのように(断れない雰囲気だった、断る権限がなかったなど)
ここまで記録できていれば、証拠能力として高いものになります。
という情報が重要になりますので、より具体性のある証拠を用意できるように普段から準備しておきましょう!
その他の証拠書類に関しては下記記事を参考にしてみてください。
名ばかり管理職は管理監督者扱いでありながら実際には裁量権も経営者と一体の立場も持たない一般労働者です。この記事では、名ばかり管理職から逃れるために必要な証拠集めについて解説しました。特に上司からの指示メールが重要な証拠となる理由や保管方法を詳しく紹介しました。また、上司からの指示メール以外にも労働時間管理表や業務内容報告書、証人などの証拠集めも必要であることを説明しました。名ばかり管理職から逃れるためには、これらの証拠集めが重要です。ぜひ参考にしてください。
以上、皆さんの参考になれば幸いです。
それでは