サービス残業をしている人は、法的に未払い残業代を会社に請求する権利があります。しかし、弁護士に頼むほどではないと思っている人も多いでしょう。そんなあなたにおすすめなのが、自分で内容証明郵便を送る方法です。この記事では、そのメリット・デメリットや作り方を詳しく解説します。
まずは自分で残業代請求を行うメリットとデメリットを考えてみましょう。
目次
残業代請求とは?
残業代請求とは、労働者が雇用主に対して未払いの残業代や休日出勤手当等を支払うように求めることです。労働基準法では、労働者は1日8時間以上または週40時間以上働く場合は割増賃金(通常25%以上)を受け取る権利があります。また、休日や深夜(22時から5時まで)に働く場合も割増賃金(通常35%以上)を受け取る権利があります。これらの割増賃金は「時間外手当」と呼ばれます。
しかし、実際には多くの会社で時間外手当が支払われていなかったり、不十分だったりすることがあります。その場合、労働者は過去3年間分(時効期間)の未払い時間外手当を会社に請求することができます。これが「残業代請求」です。
内容証明郵便とは?
内容証明郵便とは、一般書留郵便物の内容文書について日本郵便株式会社が証明するサービスです(内容証明 | 日本郵便株式会社)。つまり、「いつ」「誰から」「誰あて」「どんな内容」の文書を送ったかということを公的機関が保証してくれる制度です。
内容証明郵便は主に契約関係や権利関係等でトラブルが発生した際に使われます。例えば、「契約解除通知」「催告状」「損害賠償請求」等です。この中でも、「催告状」と呼ばれるものは特定の行為や金銭等を相手方から要求する文書です。「残業代請求」も「催告状」の一種です。
自分で内容証明を送るメリット
自分で残業代請求をするメリットはなんといってもお金がかからないと言う点と、うまくいけば他の手続きよりも時間をかけずに残業代を回収できると言う点です。
- お金がかからない
- 最短で金額を回収できる
- 送付した時点で残業代の時効期間が止まる
1番のメリットは上手く行った時に、一番お金がかからないという点です。何通かの郵便物の郵送費用のみで済みます。ただ、気をつけなければならないのは「内容証明郵便」で送る必要があるという点です。これがなかなか面倒な手続きが必要で、一般の人が触れる機会はまずないのではないでしょうか。
送付した時点で残業代の時効もストップすると言うのも重要な点です。
残業代の時効は3年で、日々3年前の未払い残業代が時効となり、回収できる残業代が消滅していきますが、内容証明郵便を送付した時点で時効期間がストップします(将来的には5年になると見込まれています)。
また、郵便物の郵送で回収ができれば交渉の期間も必要なくなるため、最短で残業代を回収できます。
内容証明郵便の作り方
内容証明郵便には特に様式は決められていません。
私の場合はワードで作成し、それを出力したものを郵便局に提出しました。
記載のポイントは下記リストの内容です。
項目が含まれていれば形式は自由です。要は内容証明郵便を送ったと言う事実が重要です。
- 用紙は自由に決めて良い
- 1行が20文字以内、1枚26行以内で作成する
- 通知内容(ここでは「割増賃金の請求」と書きます)
- 対象となる期間(◯年◯月◯日〜△年△月△日)
- 請求額(自分で計算する必要があるので注意!)
- 振り込み口座
- 送付した日付
- 差出人の住所・氏名
- 名前の横に実印を押す
- 受取人の住所・会社名・代表取締役の氏名
- 2枚以上の場合はホチキスで止める
- 書類は3部用意する
- 内容証明郵便を扱っている郵便局で提出する
- 配達証明をセットでつける
- 控えは持ち帰って保管する
やること多いですね。とはいえ法的にも効力のある正式な書類なので仕方がありません。
郵便局に提出するときは1行の文字数を一つずつ数えてチェックするのでドキドキです(笑)
もし間違えていたらまた作り直して、印刷して再提出をしなければならないからです。
そのため、事前チェックは細部まで行い再提出がないようにしましょう。
ちなみに私は1回再提出になりました。かなり面倒でした。
「内容証明郵便」書き方や使い方、注意点については下記の動画をご覧ください。
参考動画|弁護士西川暢春の咲くや企業法務TV
自分で内容証明を送るデメリット
実はこれ私実際にやりました。回収できると考えていたというよりも、会社側がどのような回答をしてくるのかの反応を確認したかったからです。
- 手間がかかる(残業代の計算から、内容証明の送付まで自分で行う必要がある)
- 回収の可能性が低い
- 直接会社と交渉する必要がある
- 交渉に失敗すれば回収額が低くなる可能性がある
手続きは全て自分で行う必要があるため、手間がかかる上に正確な請求額の数値を出すのが難しいと言うデメリットがあります。
また、会社も反論するのが容易です。
あくまで弁護士に依頼するなどの姿勢を匂わす程度の影響力しか与えられないでしょう。そもそもこれで払うくらいなら最初から払っているでしょうからね。
案の定会社側からは反論書が届き、支払うつもりがない旨の返答が来ました。
会社側の回答は以下のようなものでした。
貴殿は、他社員をはるかに上回る報酬その他待遇面で採用され、経営に関わる重要情報を把握し、それを扱う業務において重要な役割を担うなど、労働時間制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務、権限を有していたこと、労働時間に関する裁量を一定の範囲で有していたことなどから、貴殿が管理監督者に該当することは明らかであり、貴殿の主張には理由がないものと判断いたします。従いまして、貴殿が主張される割増賃金んのご請求には、その計算根拠が不明である点をおくとしても、そもそもの法的根拠を書くことから、弊社といたしましては応じかねますことを申し上げます。
ブラック企業の反論より
つまり、給与面で一般社員よりも高額であることと、経営情報を扱っていたことにより、管理監督者であるとの主張です。
※管理監督者は法律上の一般社員とはならないため残業代を支払う費用はありません。このことについては別の記事で触れていますのでそちらをご覧ください。
私の場合は、管理職であるという点が話をややこしくしていますが、一般社員で、かつサービス残業をしている場合が明らかな場合は回収できる可能性はあるかもしれません。
ちなみにですが、結果としてこの会社側の主張は弁護士との協議の中で取り下げられ、残業代を回収できたので、この主張は誤りであるということは明らかになりました。
まとめ
証拠が十分に揃っていて、金額計算も行える状態でしたらやってみる価値はあるかもしれません。弁護士に依頼すればその分の報酬を支払う必要がありますし、何より手続き自体には面倒ですがお金はほとんどかからないので。
もしこのステップで回収できなくても、この後に労働基準監督署、弁護士と段階を追って請求することができるので、「当面の生活資金が確保でいていて、時間的な制約がないのならやってみてもいいかな」程度の期待値だとおもいます。
以上、みなさんの参考になれば幸いです。
それでは