職場でハラスメントにあっていると感じたことはありませんか?ハラスメントは、上司や同僚からの暴言や暴力、過度な指導や無視など、人格や尊厳を傷つける言動です。
ハラスメントは、被害者の心身に深刻な影響を及ぼし、仕事の能力やモチベーションを低下させるだけでなく、うつ病や自殺などの重大なリスクもあります。
しかし、ハラスメントにあっているとしても、それを訴えることは簡単ではありません。加害者がパワハラを否定したり、会社が真剣に対応してくれなかったりすることもあるでしょう。また、自分が被害者だと認めたくなかったり、周囲に迷惑をかけたくなかったりする気持ちもあるかもしれません。
しかし、ハラスメントに対して黙っていては、解決することはありません。自分の権利を守るためにも、ハラスメントにあったらどうすればいいのか、知っておく必要があります。
この記事では、ハラスメントの証拠集めから法的な側面まで、被害者が知っておくべき対策方法を詳しく解説します。ハラスメントから自分を守るために必要な知識と行動を身につけましょう。
目次
ハラスメントとは
ハラスメントの種類
ハラスメントには、パワハラ(パワーハラスメント)、セクハラ(セクシャルハラスメント)、マタハラ(妊娠・出産・育児等に関するハラスメント)、アカハラ(アカデミックハラスメント)、モラハラ(モラルハラスメント)など、さまざまな種類があります。
労働者の3割はハラスメントを受けている
厚生労働省の調査によると、2019年度における労働者の約3割が職場で何らかのハラスメントを受けた経験があると回答しています。また、約4割が職場で何らかのハラスメントを目撃した経験があると回答しています。
このように、ハラスメントは現代社会の深刻な問題です。しかし、多くの被害者は、証拠がないことや相談先がわからないことなどから、声をあげられずに苦しんでいます。
対処法がわからずに事件になることも
ハラスメントに対しては適切な対処法があります。対処法がわからずに追い込まれてしまうと、暴力行為などの事件に発展してしまうこともあります。
社内通報制度だけでなく、第三者機関を頼り、法的な対処をしてもらう選択肢があることも覚えておくことが必要です。
実際、厚生労働省の調査でも勤務先にパワハラの相談をしたにもかかわらず「特になにもしなかった」割合は47.1%もあり、勤務先への相談は無意味に終わってしまうことが多いことを示しています。
そのため、社内通報だけでなく労働基準監督署や弁護士などの第三者機関を利用すること。その際に必要となる証拠集めなど、訴えるために必要なことを覚えておくことが自分を守るために必要です。
ハラスメントの証拠集め
ハラスメントにあったら、まずはその証拠を集めることが重要です。証拠があれば、会社や労働局などに相談したり、加害者や会社に損害賠償を請求したりする際に有利になります。逆に証拠がなければ、ハラスメントの事実関係を確認できず、信じてもらえない可能性もあります。
では、どのようにして証拠を集めればよいのでしょうか?ここでは、ハラスメントの証拠として有効なものや注意点を紹介します。
ハラスメントの言動や状況を記録する
ハラスメントは言葉や態度で行われることが多いため、その場で録音や録画ができれば最も確実な証拠となります。しかし、録音や録画が難しい場合や違法になる可能性がある場合もあります。その場合は、メモや日記でハラスメントの言動や状況を記録することがおすすめです。
メモや日記には、以下のような内容をできるだけ具体的に書きましょう。
- ハラスメントが起きた日時と場所
- ハラスメントを行った人の氏名や役職
- ハラスメントの内容や言葉
- ハラスメントの目撃者や関係者の氏名
- ハラスメントの影響や被害者の感想
メモや日記は、ハラスメントが起きた直後に書くことが望ましいです。時間が経つと記憶が曖昧になったり、加害者や会社によって事実を歪められたりする可能性があります。
また、メモや日記は、できるだけ第三者に見せられるように整理しておくことも大切です。
証拠となる資料や証人を確保する
ハラスメントの証拠として、メールやLINEなどのやりとりの履歴、業務命令や部署異動の通達などの文書、ICレコーダーの音声やカメラの映像なども有効です。
これらの資料は、ハラスメントの言動や状況を客観的に示すことができます。資料は、できるだけコピーを取って自分で保管しておくことがおすすめです。退職後に証拠を集めることは難しくなるからです。
また、ハラスメントの証人となる同僚や上司なども重要な証拠です。証人は、ハラスメントの事実関係を裏付けたり、被害者の心情を証言したりすることができます。
証人には、ハラスメントを目撃した人だけでなく、被害者が相談した人や加害者が自白した人も含まれます。証人には、できるだけ早く協力を依頼しておくことが望ましいです。時間が経つと忘れたり、加害者や会社に圧力をかけられたりする可能性があります。
証拠集めの注意点やコツ
ハラスメントの証拠集めは、被害者にとって不利益にならないように注意しなければなりません。以下のような点に気をつけましょう。
証拠集めが加害者にバレると、ハラスメントがエスカレートしたり、証拠を隠滅されたりする恐れがあります。そのため、証拠集めは極秘に行い、信頼できる人以外には知らせないようにしましょう。
証拠集めは、会社や労働局へ相談するだけでなく、将来的に裁判や労働審判を行う可能性も考えておく必要があります。その場合は、証拠の信憑性や合法性が問われることもあります。例えば、録音や録画は、加害者の同意がないと違法になる可能性があります。また、メモや日記は、自分で書いたものなので、客観的な証拠として認められない場合もあります。そのため、証拠集めの際には、法的な手続きに備えて、弁護士に相談することもおすすめです。
証拠を集めたら、それらを整理しておくことも大切です。証拠は、日付や内容、関係者などを明確にして、分かりやすくまとめておきましょう。また、証拠は紛失や破損しないように保管しておくことも必要です。証拠が不十分だと、ハラスメントの立証が困難になる可能性があります。
ハラスメントの相談窓口
ハラスメントの証拠を集めたら、次に相談窓口に相談することが重要です。相談窓口に相談することで、ハラスメントの事実関係を確認したり、解決策を提案したりしてもらえる可能性があります。また、相談窓口に相談したこと自体も証拠となります。
では、どのような相談窓口があるのでしょうか?ここでは、会社内の相談窓口や信頼できる上司に相談する方法と、労働組合や都道府県労働局などの外部の相談窓口に相談する方法を紹介します。
会社内の相談窓口や信頼できる上司に相談する
ハラスメントにあった場合、会社内の相談窓口や信頼できる上司に相談することは選択肢の一つです。会社内で解決できれば、トラブルを最小限に抑えることができます。会社内で相談する場合は、以下の点に注意しましょう。
会社内で相談する場合は、相談先を慎重に選ぶ必要があります。加害者と関係が深い人やハラスメントを容認する人は避けましょう。信頼できる人事部や上司、社内のハラスメント防止委員会や相談窓口などが望ましいです。
相談する際は、自分がどのようなハラスメントにあっているか、どのような解決を求めているかを明確に伝えましょう。また、証拠を提示したり、メモを取ったりしておくことも大切です。
相談した後は、 会社がどのような対応をするかを確認しましょう。具体的な期限や方法を明記した文書で回答してもらうことが望ましいです。また、会社の対応が不十分だと感じた場合は、再度相談したり、外部の相談窓口に相談したりすることもできます。
ただ、実態として社内で相談しても適切な処置をしてくれる可能性が低いことはデータが示していますので、本当に信頼できる組織や上司の場合に限られると思います。
労働組合や都道府県労働局などの外部の相談窓口に相談する
会社内で相談することが難しい場合や、会社内で相談しても解決しない場合は、外部の相談窓口に相談することもできます。外部の相談窓口には、以下のようなものがあります。
労働組合は、労働者の権利や利益を守るために活動する団体です。労働組合に加入している場合は、ハラスメントに関する相談や支援を受けることができます。
労働組合は、会社と交渉したり、団体交渉やストライキなどの行動を起こしたりする力があります。また、労働組合は、労働者が会社から不当な解雇や不利益な処分を受けた場合にも救済してくれます。
ただ、個人的にはあまり期待できないかもしれません。第三者機関へ通報した方がスムーズな対応が期待できると思います。
都道府県労働局は、厚生労働省が設置した地方機関で、労働問題に関する相談や指導を行っています。都道府県労働局に相談することで、ハラスメントの実態調査や会社への是正勧告などの措置を行ってもらえる可能性があります。また、都道府県労働局には、総合労働相談コーナーという窓口があり、パワハラを含めた幅広い労働問題について無料で相談できます。
弁護士は、法律問題に関する専門家です。弁護士に相談することで、ハラスメントの法的な側面や対策方法をアドバイスしてもらえます。また、弁護士は、加害者や会社との交渉や代理訴訟などの代理業務も行ってくれます。弁護士に依頼する場合は、弁護士費用がかかりますが、法テラスなどの制度を利用すれば費用負担を軽減できる場合もあります。
ハラスメントの法的な側面
ハラスメントにあった場合、法的な手段を取ることもできます。法的な手段としては、以下のようなものがあります。
ハラスメントに関する法律や指針
ハラスメントに関する法律や指針としては、以下のようなものがあります。
パワーハラスメント防止法(改正労働施策総合推進法)は、2020年6月に施行された新しい法律です。パワーハラスメント防止法では、パワーハラスメントとは、「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題」と定義し、事業主に対してパワーハラスメントの防止措置や相談対応などの義務を課しています。また、パワーハラスメント防止法では、パワーハラスメントの実態調査や是正勧告などの措置を都道府県労働局が行うことができるようにしています。
職場におけるハラスメントに関する関係改正指針等は、厚生労働省がパワーハラスメント防止法に基づいて作成した指針です。この指針では、パワーハラスメントの具体的な事例や判断基準などを示しています。また、事業主が職場におけるパワーハラスメントに関する問題に対して雇用管理上講ずべき措置等についても示しています。
ハラスメントの被害にあった場合、加害者や会社に対して損害賠償請求を行うことができます。
損害賠償請求とは、自分が被った損害を相手方に支払ってもらうことを求めることです。損害賠償請求とは、自分が被った損害を相手方に支払ってもらうことを求めることです。損害賠償請求を行うには、以下の条件が必要です。
- ハラスメントがあったこと
- ハラスメントによって損害が発生したこと
- ハラスメントと損害の間に因果関係があること
- 加害者や会社に過失や責任があること
セクハラ・パワハラの損害賠償は、被害者が受けた精神的苦痛や身体的損害に対する賠償金のことです。セクハラ・パワハラの損害賠償の金額は、被害の内容や程度によって異なりますが、一般的な賠償額の相場は、100万円~300万円のケースが多いといえます(弁護士法人:さくら北総法律事務所)。
ただし、以下のような場合には、慰謝料が高額になる可能性があります(弁護士法人:若井綜合法律事務所)。
- 被害者がうつ病などの治療が必要になった場合
- 被害者が退職や自殺に追い込まれた場合
- パワハラやセクハラが犯罪行為(傷害罪や強制わいせつ罪など)にあたる場合
- パワハラやセクハラが長期間や執拗に行われた場合
参考|中小企業法務チャンネル
損害賠償請求の方法
損害賠償請求を行う方法としては、以下のようなものがあります。
和解とは、加害者や会社と話し合って、互いに納得できる条件で解決することです。和解は、裁判や労働審判よりも時間や費用がかからず、秘密にできるというメリットがあります。しかし、和解は、相手方の同意が必要であり、強制力がないというデメリットもあります。
裁判とは、裁判所に訴えを提起して、裁判官に判断してもらうことです。裁判は、強制力があり、公正な判断を期待できるというメリットがあります。しかし、裁判は、時間や費用がかかり、公開されるというデメリットもあります。
労働審判とは、労働基準法に基づいて設置された制度で、労働問題に関する簡易な審査を行ってもらうことです。労働審判は、裁判よりも迅速かつ簡便に解決できるというメリットがあります。しかし、労働審判は、一定の金額以上の損害賠償請求には適用されない場合や、相手方の不服申し立てによって無効になる場合もあるというデメリットもあります。
まとめ
職場でハラスメントにあったらどうするか、この記事では以下のポイントを紹介しました。
ハラスメントの証拠集め
- ハラスメントの言動や状況を記録したり、資料や証人を確保したりすることが重要です。
- 証拠集めは、加害者にバレないようにしたり、法的な手続きを考えておいたりする必要があります。
ハラスメントの相談窓口
- ハラスメントにあったら、会社内の相談窓口や信頼できる上司に相談することが望ましいです。
- 会社内で相談することが難しい場合や解決しない場合は、労働組合や都道府県労働局などの外部の相談窓口に相談することもできます。
ハラスメントの法的な側面
- ハラスメントに関する法律や指針としては、労働契約法や労働基準法、パワーハラスメント防止法やパワーハラスメント防止指針などがあります。
- ハラスメントにあった場合、加害者や会社に対して損害賠償請求を行うことができます。損害賠償請求を行う方法としては、和解や裁判、労働審判などがあります。
ハラスメントは、被害者の心身に深刻な影響を及ぼすだけでなく、職場の雰囲気や生産性にも悪影響を与える問題です。
ハラスメントの被害にあったら、自分の権利を守るためにも、証拠集めや相談窓口、法的な手段などを活用して、早期に解決することが大切です。ハラスメントから自分を守るために必要な知識と行動を身につけましょう。