今回は、労災申請の時の開示請求についてお話ししていきます。私が実際に労災申請した時に得た情報を公開することで、労災申請を迷っている人ややり方がわからない人の手助けになればと思います。
開示請求とは、実際に労働基準監督署がどのように調査をして、どういう結果を出したのかを確認できる調査報告書を請求することです。
労災を申請した全員が行う権利を持ち、労災申請の結果に関わらず、申請を出した人は誰でもこの開示請求を行うことができます。
実際にどのような資料を持って審査を行ったのか、私の入手した調査報告書を例に見ていきましょう。
開示請求で入手した資料のリストは下記の通りです。
- 平均賃金
- 労働時間(提出資料)
- 業務起因性
- 承認理由
- 診療歴
- 電話調査(労働基準監督署の調査官との電話記録)
- 申立書(提出資料)
- 使用者申立書(会社の反論資料)
- タイムカード(提出資料)
- 産業医との面談シート(会社で行った産業医面談の記録)
()で書いているものは事前にこちらで把握していたものです。
それ以外は、労働基準監督署が調査で入手した資料ということになります。
それでは早速みていきましょう。
目次
平均賃金
まず平均賃金ですが労災における平均賃金は次のように計算されます
平均賃金
疾病・ケガの日から前の給与〆日から
過去3ヶ月間の賃金※の平均値
※賃金 = 基本給 + 残業代 + 通勤手当
これが、もし労災が認定された場合に支払われる休業補償の計算元となります。
平均賃金の計算は労働基準監督署でやってくれるのでお任せしましょう。
※労災の場合休業補償の金額は平均賃金の80%です
労働時間(提出資料)
発病前6ヶ月間の労働時間を調べるために必要です。
精神疾患の場合の労災判定基準の中に
「1ヶ月内に80時間以上の時間外労働をおこなった」
「連続して2週間以上にわたって勤務を行なった」
と言う判定基準がありますので、実際に長時間勤務を行なったのかを調査し、精神負荷の判定が行われます。重要な判断基準になりますので、必ず押さえておきましょう。
なお、同じ長時間労働でも無条件で「強」と判断され、労災認定されるケースは下記の図の通りです。もっともここまでひどくなくても十分労災認定されるケースはありますので、労災申請はすることをお勧めします。
業務起因性
さて、これについては労働基準監督署の調査結果がもとになります。
本人への聞き取り調査と、実際に企業に行って行う実態調査を合わせ、精神的負荷がどの程度あったのかを調査官が判断をし、報告書を書きます。
その報告書によって判断されるのが、この業務起因性です。
ここで認められなければ労災の認定は厳しいものになると考えた方がいいでしょう。
そのためには、労働基準監督署への提出資料と、聞き取り調査への準備はしっかりと行なっておきましょう。
承認理由
これは労働基準監督署の中の最終手続きです。
業務起因性が確認されたあと、労災認定を行うための承認手続きと考えて良いでしょう。
これも労働基準監督署と労働局との間で完結する業務なので、直接申請者が関わることはありません。
診療歴
これは業務起因性に対して重要な要素です。
と言うのも、精神疾患の証明は難しく、もし何らかの持病を抱えていたりする場合は、業務が原因ではなく、事業が原因なのではないか?と判断されてしまう可能性があるからです。
そうならないためにも、のちに説明する申立書には職場のストレスや、精神負荷についてしっかりと主張しておきましょう。最終的に重要となるのは長時間労働などの数値ですが、そこでの判断が難しい場合は他の要因を検討せざるを得ないからです。
パワハラやセクハラがあった場合はその旨も記載しておきましょう。
大変ですが、将来の自分を助けるために一踏ん張りしましょう。
電話調査(労働基準監督署の調査官との電話記録)
申立書に基づいて、調査官が聞き取り調査を行います。
私の場合は電話でしたが、場合によっては直接労働基準監督署に行く必要があるかもしれません。
聞き取り内容は申立書を読んだ調査官が疑問に思った部分の確認と、申立書の内容確認が主になります。また、その他パワハラなどの事実がなかったかを聞いてくる場合もありますので、そういった事実がある方は正直に答えましょう。
基本的に調査官は労働者の味方ですので正直に答えて問題ありません。
答えに詰まった場合でも助け舟を出してくれます。
ただ、どんな質問が来ても答えられるように、提出した資料はコピーを取っておき、提出資料内で語りきれなかった部分については調査時に答えられるようにしておきましょう。
実質的にここが自己主張できる最後の機会となるので、余計かなと思う部分も全て話しておくのが良いでしょう。
申立書(提出資料)
正式に労災申請を行う際に労働基準監督署から記載を依頼される資料です。
が、記載項目が小さいので、別途資料を用意して細かい証拠となりそうな事柄をまとめて提出するのが良いでしょう。
電話調査の元資料となると説明したように、労働基準監督署にとってはこの申立書が手がかりとなって調査を行いますので、申立書作成前に厚生労働省が発行している「精神障害の労災認定」について読み込んでおき、該当する箇所に関して記載しておくのが良いでしょう。
なお、「精神障害の労災認定」に関しては、下記のリンクを参照ください。
実際に私が提出した「申立書」をもとに記事を書きましたので提出を検討している方は参考にしてみてください。
使用者申立書(会社の反論資料)
これは会社側の反論資料です。
労災となると会社側のイメージ低下は免れませんから必ず反論してくるでしょう。
ただしこれに関しては気にする必要はありません。
いくら会社が反論しようが、労働者側の実態が重要ですのでこれは労働基準監督署にお任せしましょう。
タイムカード(提出資料)
残業代請求でも重要になったタイムカードです。
これは非常に重要な資料となります。
会社側が抵抗できる唯一の手段かもしれません。
タイムカードを先に切らせたり、勤怠データを改ざんしたりする場合があるからです。
そういったことを防ぐためにも、タイムカードだけではなく出退勤記録のメモは必ず取っておきましょう。時間は1分単位です。始業前、休憩時間、終業時刻それぞれについて必ず記録しておきましょう。
産業医との面談シート(会社で行った産業医面談の記録)
月の残業時間が80時間を超えた社員が必ず受けなければいけない面談ですが、面談を受けさせないためにタイムカードを早めに切らせたり、入力する勤怠データを改ざんさせたりする企業はたくさんあると思いますので、やはりメモは必ず取っておきましょう。
面談を受けている方は、労働基準監督署の調査官が会社へ聞き取り調査を行う際に提出を求める資料なので、任せてしまって良いでしょう。
まとめ
上記を読んだ方はお分かりだと思いますが、会社はわかっていてあなた方に長時間労働をさせているのです。それで倒れたとしても会社は最後まで面倒見てくれません。
休職期間が終われば退職になるでしょうし、以前のように働けなくなった人間を閑職や自主退職に追い込むと言う例も聞かれます。
自分の身を自分で守るために、労働基準監督署の力を借りることは悪いことではなく、労働者全員が持っている権利です。
周りの人間がなんと言おうとその人たちはあなたの人生の責任を取ることができません。
私自身、一歩を踏み出すのは大変でしたが、今では踏み出して良かったと思っています。
最後に「精神障害の労災認定」のリンクを貼っておきます。
読むのは大変ですが、労災認定されるかされないかを左右する重要な資料です。労基署に行く前に必ず目を通しておきましょう。
以上、この記事がみなさんのお役に立てれば幸いです
それでは