今回は残業代請求の事例についてお話ししたいと思います。
最初は自分が残業代請求をする時は不安しかありませんでした。
証拠は揃えたものの、ちゃんと請求は通るのだろうか?
どこに訴えでたら良いのか?
最初は労働基準監督署しかわからなかったので、これで大丈夫なのだろうか?
正直不安だらけでした。
そこで私の体験談を発信する経緯に至ったわけですが、私が参考にした事件を何件か紹介します。
この事件の記事があったために行動に起こすことができた部分がありますので、皆さんにも共有したいと思います。
目次
管理監督者について確認
管理監督者の定義は大まかにいうと下記の4つです。
- 部門等を統括する立場である
- 会社経営に関与している
- 労働時間や休憩は自由であり、労働基準法の規定が適用されない
- 給与面で他の従業員より優遇されている
管理監督者とは、一言で言うと「経営者と一体の立場」にあると言うことです。
具体的には、「経営会議に参加し、自分の事業についての発言権を有し、事業の予算をもち、行使する権限があり、業務時間は自由に決めることができ、残業代では埋まらないほどの報酬を受け取っている」と言う条件をすべて満たしている必要があります。
つまり「管理職」と呼ばれるほとんどの役職は「管理監督者」には該当せず、実態はただの従業員ということです。もっとも、だからこそあえて「管理職」という言葉を作り煙に巻く方法をとっているのかもしれませんが…。
いずれにしても重要なのはその実態であり、部長や主幹、マネージャーといった「名称」は何の証明にもならないということです。
では実際に「管理監督者として認められなかった」事例を見ていきましょう。
日産事件
この事件は、マネージャー職にあった管理職が
- 1,200万円という社内でも上位の高給をもらっていること
- 課長職に相当する地位の立場にあったこと
- 労働時間の自由があったこと
という一般的には好条件とみられる立場であったにもかかわらず、裁判では管理監督者性が認められなかった(名ばかり管理職)という判決が出たという事件です。
投資判断をする会議における経営意思の形成に直接的な影響力を行使しているのは、PD(経営者側)であって、マネージャーは、PDの補佐にすぎないから、経営意思の形成に対する影響力は間接的である。
さらに、マネージャーは、収益に影響がないファンクションリプライを裁量で変更することができたが、収益に影響がある際には、PDM会議で、コントラクトを再提案して、CEOの決裁を得る必要があったのであるから、マネージャーの権限は、限定的であったといえる(※弁護士 師子角允彬のブログより抜粋)。
注目すべきは「管理監督者」としての条件のほとんどを満たしているにも関わらず、「意思決定の場において、経営者と一体の立場があったとは言えない」という点で「管理監督者性」が否定されたということです。
意思決定の部分を除いたとしても、多くの企業の「管理職」よりも高い待遇・裁量があってもこの判決なわけですから、ほとんどの企業に存在する「管理職」で残業代をもらっていない人たちは「名ばかり管理職」である可能性は高いと判断できます。
この事件の内容と自分の条件に照らし合わせた時に、自分の管理監督者性が否定される可能性が高いのでは?という疑問が生じ、残業代請求を行うことにしました。
マクドナルド事件
これは名ばかり管理職と検索すると一番多く出てくる事件ではないでしょうか。
残業代を削減する対処とするために、管理職を増やす企業のやり方の典型例です。
- 店舗の店長という立場である
- 部下の採用、人事考課など人事権を有している
- 賃金が他の従業員よりも多い
上記の条件でしたが、実質的には100 時間以上の長時間労働を余儀なくされたり、会社の経営方針に参画する権限を持たなかったなどにより、結局裁判では管理監督者性が否定され、名ばかり管理職であることが確定しました。
平成20年1月東京地方裁判所で、日本マクドナルドの店長が労基法上の管理監督者には当たらないとして、残業代等約750万円の支払いが命じられています。
名ばかり管理職の判例はその性質上、高額になりやすいことが挙げられます。というのも「そもそも残業代が支払われていないので、残業時間全てが請求対象になる」ことと「役職手当は残業代の代わりにはならず、むしろ残業代計算の基礎額として計算されるため、時間単価がその分上昇する」と言う点があるためです。
上記のように、割増賃金(残業代)から除くことができる手当の内容は決まっており「役職手当」は含まれていません。つまり基本給や能力給など様々な名称の手当がありますが、それら全てを含んだ金額が「残業代計算の基礎額」となり、その金額に乗率がかかるため、企業側にとってはダブルパンチになるわけです。
この事件では店長という立場のため、一般の会社からはイメージし辛い点があると思いましたが、肩書きは関係なく、実態が重要であるという点を強調されていたために自分も該当するという判断をすることができました。
まとめ
名ばかり管理職の事件としては有名な2件の事例ですが、私は自分で調べるまでは全く知りませんでした。
それでも調べていくうちに、会社の呼ぶ「管理職」という名称の役職が便利な言葉として使われていることがわかり、過去を振り返ってみても、ほとんどの方が「管理監督者」には該当しないということがわかったのです。
これを読まれている管理職の方もほとんどが管理監督者ではないでしょう。
会社側はコストを抑えるために管理職という名前を使いあたかも管理監督者かのように扱いますが騙されてはいけません。未払いとなっている残業代は、すでに提供している労働の対価ですから受け取るのは当然の権利です。
というより、企業が報酬を払わない違法行為です。
会社が給料を払えないという理由で傾くくらいなら、それは経営者の問題です。
本来支払わなければならない費用を払っていないで上げた利益であれば、株主に対しても虚偽の報告をしていることになります。
胸を張って残業代を請求しましょう。
弁護士西川暢春の咲くや企業法務TV
私の持っている情報はこのブログで全て提供していますので、ぜひ参考にしていただき、本来もらうべきだった給料をもらう手続きをとってもらいたいと思います。
以上、今回は私が名ばかり管理職として残業代請求をした際に参考にした事件を紹介した。ブログでは私自身の体験を提供していますが、私も何件も事件を調べ、参考にした事件がありましたので紹介をさせていただきました。
当然の権利を持ちながら主張できずにいいように使われ、潰されていった人たちを私は何人も見てきました。
多くの人が声を上げることで、経営者や企業はこの状況を無視できなくなると思います。
私は現状の悲惨とも言える状況を変えたいと思ってこの情報を発信しています。
皆さんの生活が、より一層良くなることを願って今回は終わりたいと思います。
それでは