労働組合のある会社にお勤めの方は組合費を払っていると思いますが、何に使われているか知っている方は少ないのではないでしょうか?
どうにかできるものではありませんが、知っておいた方が良いとも思うので、今回は労働組合の組合費についてお話ししたいと思います。
組合が全然活動しないのに組合費だけは上がっていく状態を経験しているので、企業によっては形骸化している組織になっています。
ベースアップよりも年次の昇給に合わせた組合費の上昇の方が高いなんて笑えない話もあります。
労働者のために戦う組織という時代は大昔の話なのでしょうか。
それでは内容を見ていきましょう。
目次
労働組合とは何か
労働組合とは何か? 労働者が自主的に作った団体で、労働条件や福利厚生などを改善するために活動しているのが労働組合です。
日本の組合員は約1千万人
日本では約1,000万人が労働組合に加入しており、そのうち約7割が企業別労働組合です(厚生労働省|労働組合)。企業別労働組合とは、一つの会社やグループ会社内で作られた労働組合のことです。
労働法では、労働者は自由に労働組合に加入したり脱退したりできることが保障されており、加入しなくても罰せられたりしません(厚生労働省|労働組合)。しかし、実際には会社や職場の雰囲気や文化によって加入するかどうか迷う人も多いでしょう(なかば強制的に加入させられる企業も少なくありませんが…)。そこで、次に労働組合に加入するメリットとデメリットを見てみましょう。
労働組合に加入するメリットとデメリット
メリット
- 労働者個人ではなく、集団で会社側と話し合うことで、より有利な条件を引き出すことができます。
- 特に大企業では、年功序列制度やベースアップ制度などが確立されており、それらはほぼ全て労働組合の交渉力によって成立しています。
- 労使協定や就業規則などで定められた福利厚生は、基本的に全従業員が受けられますが、その内容や水準は大きく異なります。
- 労使協定や就業規則は通常、会社側から提示されるものではなく、労使間の話し合いや交渉の末に決まるものです。
- 効果的な交渉を行うためには、多数の従業員から支持される強力な代表者(=労働組合)が必要です。
- 不況時や事業再編時などでも解雇されずに済む可能性が高まります。
- 経営陣から直接的な圧力や不当な扱いを受けることが少なくなります 。
- 職場の人事や評価に関するルールや基準を明確化し、公平に運用されるように要求できます。
- 昇進や昇格のチャンスを平等に与えられるように働きかけることができます。
- 労働者の権利を守るために、法律的な知識や経験を持った専門家を雇っています 。
- 労働者個人では対抗できない会社側と互角に渡り合う力を持っています 。
- 労働者の立場から最善の解決策を提案し、必要に応じて裁判所や行政機関への訴えも行います 。
- 労働者同士の交流や情報共有の場を提供しています 。
- 労働者の声をまとめて社会的な影響力を発揮しています 。
- 労働者の生活や福祉に関する様々なサービスや優待制度も提供しています。
デメリット
- 労使間の対立が深まると、信頼関係が失われたり、コミュニケーションが困難になったりします 。
- ストライキは最後の手段であり、それ以前に多くの協議や交渉が行われますが、それでも解決しない場合は避けられません。ストライキ中は仕事が滞ったり、収入が減ったりします。また、ストライキ後も会社側から反感を買ったりする可能性もあります。
- 労働組合は自主的かつ民主的な団体であるため、その運営費用は全て加入者から徴収されます。一般的には月額数千円程度ですが、会社規模や業種・業界ごとに異なります。また、ストライキ時には特別費用も必要です。
- 労働組合活動は通常業務時間外(残業や休日)に行われることが多く、その分プライベートな時間が削られることがあります。また、組合役員や委員などの役割を担う場合は、さらに責任や負担が増えます。
- 労働組合は、労働者全体の利益を最優先するため、個人差を無視したり平均化したりする傾向があります 。
- 特に年功序列制度やベースアップ制度などでは、年齢や在籍年数によって給与や昇進が決まるため、能力や実績とは関係なく収入や地位が上がることもあります。これは、努力したり成果を出したりする動機づけにならないばかりか、不公平感を生むこともあります。
- 労働組合は会社側からの圧力に対抗するために団結する必要があります。そのため、加入しない人(非組合員)を見下したり排除したりする風潮が生まれることもあります 。
- 非組合員は労働組合の交渉成果によって得られた福利厚生を享受できる場合も多く、「タダ乗り」だと批判されることもあります。一方で、非組合員は自分の意思で会社側と直接交渉できたり、個人的な評価や報酬を受けられたりする場合もあり「特別扱い」だと妬まれることもあります。
以上、メリットデメリットを見てきましたが、本来の目的や機能であるため、実際の現場レベルでこの機能が正しく働いているとはあまり感じませんでした。特に高い組合費にふさわしい活動をしているとは考えにくく、形式的な手続きを繰り返すだけで、本来の目的や理念は忘れ去られ、とても会社と対等な立場で戦う姿勢があるとは思えませんでした。
会計監査を経験して感じた違和感
以前勤めていた企業では職場ごとに持ち回りで会計監査担当代わっており、その順番が回ってきたことでとある事業所で会計監査を担当することになりました。
労働組合のある企業では職場ごとに組合代表者を選出し、ストライキのアンケートや春闘の支部会などに出席し、それが組合活動として扱われていました。
高い組合費に対する疑問
労働組合に加入している人は多いと思いますが、組合費の高さだけでなく、その効果や必要性に疑問を持っている人も少なくないのではないでしょうか。私は以前、ある企業の労働組合の会計監査を担当したことがありますが、そのときに目にした組合の内部事情や賃金・賞与交渉の裏側には驚愕するべき事実が隠されていました。
まず、組合費はどこに使われているのでしょうか。組合費は主に経営者との交渉や団体交渉などの活動費用として使われると思われていますが、実際にはその一部しか活動に回されず、残りは役員報酬や旅行費などに消えていくことが多いです。
会計監査担当は組合執行部側の人間
私は組合の支部を担当している立場でしたが、組合の役員になると本部との”打ち合わせ”や研修会などの名目で役員が忙しくしていることが多いことがわかります。ですが「なにをしているのか」までは把握することはできません。
せいぜい総会などの全体集会での報告会で話を聞く程度のものです。実際私もそうでした。
ですが、会計監査は「すべての領収書」を確認することによって執行部側の人間のため普段の行動を把握することができます。
労働組合があるから安心という考えの危険性
労働組合があるから安心と思っていませんか?
労働組合があるからボーナスの確保できるのだ。と思っていませんか?
全ての企業を見たわけではありませんが、一般的に優良企業と呼ばれている企業の労働組合にいた経験をお話しすると
そんなことはありません。
ボーナスは労働組合が頑張って企業と戦って勝ち取っているのではありません。
昔は確かにそうだったのでしょう。
ですが今の労働組合と経営者との事務局折衝は形骸化しています。
組合費は何に使われている?
企業によって様々ですが組合費が何に使われているかご存知ですか?
組合の会計監査をやっていた「領収書の内容」をみるといろんなことがわかります。
労働組合の予算と実績の比較、それから何にお金が使われているか、全ての伝票をチェックすることです。
内容を見てみましょう
- キャバクラ
- 宴会
- 飲み会費
- キャバクラ
- キャバクラ
- 会食
- キャバクラ
- キャバ…
ほとんどがキャバクラでした…。
みなさん毎月いくら組合費が引かれているか給与明細を見てみてください。
自分のお金が何に使われているかはよく知っておきましょう。
ベースアップの交渉金額より多い金額が引かれていませんか?
「ベースアップするよりも組合費を下げてくれよ!」
という笑い話もあるほどです。
これが使用されている組合費の実態です。
まあ、そもそも労働組合がちゃんと機能していれば未払い残業代なんてものは発生しないはずなんですけどね。
ボーナス・ベースアップのために交渉を頑張っているのは誰か?
ではボーナスは?
ベースアップ交渉は?
組合員の皆さんは集まって組合の活動報告を受けていますよね?
その都度組合との交渉が行われている。会社と戦っている姿を写真で見せられますよね?
ボーナス・ベースアップを決めているのは経営陣です。
春闘前に行われる予算策定
年度計画は四半期ごとに見直します。
その時に進捗状況と年間の見込みを出します。
そして利益が大きくなり過ぎたりすると外部に公表している年間予想との乖離が発生します。
その場合は「業績修正」を外部に公表しなければなりません。
経営者によってはこれをすごく嫌がります。
そこで調整するのが従業員の給料です。
ボーナスは会社の利益を調整するのに便利な項目なのです。
そして経営会議で先にボーナス額を決め、それに合わせるように数回の交渉を経た上で見事交渉成立。
交渉が始まる頃にはボーナス額は決まっています。
今の労働組合にボーナスを強制的に出させる力はありません。
ベースアップも同様に経営陣の一存で決まります。
ただし、一度挙げた給与を下げるのは難しいのでベースアップはなかなか行われません。
日本ではストライキが起こりにくい
日本でストライキが起こったという話はほとんど聞きませんよね?
アメリカではよくストライキが起こります。
労働者がしっかりと意思表示をして経営陣に要求をするからです。
日本の労働者は、労働組合までもがすっかりと経営層に飼い慣らされ戦う力などないのです。
その証拠に労働組合がある企業でも、名ばかり管理職やサービス残業が横行しています。
なぜ組合はそんな悪行を放っておいているのでしょうか?
彼らにはそんな力はもはやないからです。
過去からの慣習で続けてきていることを
「形式的」
に続けているだけに過ぎません。
そのため、これから入る就活生や転職者は気を付けておいた方がいいです。
労働組合があるから安心だ。
この考えは幻想です。
彼らは労働者にまともな賃金を払うための行動すら起こせないのですから。
名ばかり管理職・みなし残業代・固定残業代・年俸制などの理由で残業代が出ないと言われている方は必ず自分で行動しましょう。
時効は3年ですので、早めに動くことをお勧めします。
豆知識「一足早く失礼させていただきます」の真意
組合の総会に出席された方も多いかと思いますので、豆知識を教えます。
先に一杯やってます
総会の時、偉い人が来てスピーチをした後こんな場面を聞いたことがありませんか?
「この後スケジュールがありますので、先に失礼させていただきます」
これ、私も知りませんでした。
「忙しい人なんだな」
と思っていただけでしたが、
実際は「一足早く飲みに行ってますね」という意味なのです。
組合の総会には打ち上げがあるのですが、みたことがある人がいました。
そう、さっきスピーチしていた人です!
あれ?予定があって帰ったんじゃなかったの?
そう予定があったのです。
居酒屋で一足早く飲むという予定が…。
ここで純粋だった私は真実を知り、
「世の中の大人って汚い!」
と思うのでした。
まとめ
今回は少し趣向を変えて、知っている人は知っている。知らない人は全く知らない情報についてお話ししました。
組合会計監査をやったことがある方にとってのあるある話ですね。
逆に組合の支部長などの役職についたことがない方は全く知らないことだと思います。
いずれにしても一つ言えることは
多くの労働組合は
「形骸化」
しているということです。
本当に戦う組合員になった場合、日本の伝統的な企業では出世を遅らせるだけですから、そこまでリスクを取って行動する人などいないでしょう。
いたとしても誰もついていかないと思います。
何度でも言いますが、「労働組合があるからホワイト企業、労働者が守られる」というのは幻想です。
企業選びの一つとして今回の記事を書かせていただきました。
また、労働組合は残業代回収やハラスメント対策はしてくれないので自分で対応しましょう。
以上、参考になれば幸いです。
それでは